あれば便利?「夜行新幹線」なぜ運行されないのか 過去に「本気で検討」も実現せず
お盆を直撃した台風によるダイヤ乱れで、東海道新幹線が夜を徹して走り、「夜行新幹線」なる言葉がSNSのトレンドに。実際にあると便利かもしれない「夜行新幹線」、過去には本気で検討されたこともありました。
実際に制作された「新幹線の寝台車」
2023年8月16日(木)、台風7号通過後の大雨による影響で、東海道新幹線のダイヤが大幅に乱れました。このため深夜から17日朝にかけても新幹線が運行され、SNSで「夜行新幹線」なるワードもトレンド入りし話題になりました。
今回のような異常時の遅延を除き、新幹線では基本的に0時から6時までは営業列車を運行しません。あると便利かもしれない「夜行新幹線」、過去には本気で検討され、実際に運行されたこともあります。
深夜に新幹線を走らせないのは、その時間で線路のメンテナンスを行うほか、列車運行による騒音などの課題も挙げられます。ただ、毎日全区間でメンテナンスを行っているわけではないため、騒音などに配慮すれば「夜行新幹線」を運行することは不可能というわけではなく、2002年のサッカー日韓ワールドカップ開催時などで実績があります。
かつては「夜行新幹線」の定期運行が本気で検討されたことがありました。1964(昭和39)年に東海道新幹線(東京~新大阪)が開業したのち、山陽新幹線が博多まで建設されることになると、当時は夜行列車の需要が想定されました。
ただ、先述のように深夜帯は線路のメンテナンスが必要です。そのため、博多行きと東京行きの夜行新幹線が深夜にすれ違うことになる新大阪~岡山間は、「片側通行」が考えられました。これは道路工事における片側交互通行のように、今日は上り線を夜行新幹線の走行に使い、下り線はメンテナンスを実施、明日は逆に下り線を走行に使う、という形です。
「夜行新幹線」の運行を見すえ、新大阪~岡山間では、多くの箇所で上り線と下り線の行き来ができるようポイントが設置されたほか、姫路には夜行新幹線の行き違いを想定して待避線も設置されています。さらに1973(昭和48)年には、車内に寝台設備を備えた「961形試作電車」まで製造されました。
1975(昭和50)年に山陽新幹線は博多まで開業したものの、結局「夜行新幹線」の定期運行は実現しませんでした。当時は新幹線の騒音や振動に対する訴訟が起きており、沿線住民の理解を得ることが難しかったことなどが理由とされています。
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