「大艦巨砲主義」は遺産です! 最も長生きした“最後の戦艦”アイオワ級 転生したらツルツル船体だった!?

「骨董品ではない 歴史遺産だ」

 こうして膨大な費用をかけてミサイル戦艦に生まれ変わったアイオワ級は、1991(平成3)年、クウェートに侵攻したイラク軍に対する「砂漠の嵐作戦」で投入され、「ミズーリ」と「ウィスコンシン」がトマホークの発射と主砲の艦砲射撃を行っています。

 しかし、同年のソ連崩壊、そして冷戦の終結をきっかけに、アイオワ級は海軍の艦艇登録簿から抹消され、本格的に退役が検討されていきます。ところが、海軍内部や長い艦歴で生まれた多くの元乗組員から現役復帰を望む声が多数寄せられました。

アメリカ海軍にとって、アイオワ級は単なる骨董品の戦艦ではなく、もはや国家を象徴する歴史遺産といえる存在になっていたのです。

 とはいえ、維持費のかかるアイオワ級をそのまま残すわけにはいきません。そこでアメリカ海軍はアイオワ級を退役させる代替え案として、長距離誘導弾を装備し、海兵隊の火力支援を行う新たな艦艇を計画します。この案を発展させたのが射程100kmの発射体を打ち出せる先進砲システムを搭載したDD(X)計画でした。

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2016年に就役したズムウォルト級1番艦「ズムウォルト」(画像:アメリカ海軍)。

 このDD(X)はステルス性をそなえたズムウォルト級ミサイル駆逐艦として実現し、2016(平成28)年に就役しました。しかし、予定された30隻以上の建造数はコストがかさみ過ぎるために3隻で中止になっています。

 他方、役割を終えて退役が決まったアイオワ級は、1992(平成4)年から2012(平成24)年にかけて4隻ともアメリカ本土とハワイで記念艦となりました。こうして、時代を超えて生き残り続けたアイオワ級は、アメリカが戦後も保持し続けた「戦艦」と「ビッグガン」の伝統を今に伝えています。

【了】

【え…】デカすぎる&強そうすぎる!! アイオワ級vs大和型戦艦を比較(画像)

Writer: 時実雅信(軍事ライター、編集者、翻訳家)

軍事雑誌や書籍の編集。日本海軍、欧米海軍の艦艇や軍用機、戦史の記事を執筆するとともに、ニュートン・ミリタリーシリーズで、アメリカ空軍戦闘機。F-22ラプター、F-35ライトニングⅡの翻訳本がある。

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