目前のガザ侵攻 イスラエル側が圧倒的に不利? だから「メルカバ」戦車は“特設屋根”をつけた
地上侵攻に向けて集結するイスラエル軍戦車「メルカバMk.4」に「鳥かご」装甲が装着されていました。これはガザ市街地戦に向けた対策であると思われます。なぜこれが必要なのでしょうか。有識者は市街戦の怖さを語りました。
「鳥かご」という名の増加装甲
2023年10月7日早朝(現地時間)に始まった、パレスチナ武装組織「ハマス」によるイスラエルへ奇襲的な越境攻撃に端を発した緊張は日々高まっており、イスラエル軍はハマス壊滅のため、彼らの拠点となっているパレスチナ自治政府ガザ地区に地上侵攻する準備を進めています。
そうしたなかで、ガザ周辺に集結したイスラエル軍の主力戦車「メルカバMk.4」の砲塔上部に、「バードケージ(鳥かご)」とも呼ばれる金網の屋根が取り付けられています。
バードケージを最初に用いたのはロシア軍でした。現在も続くロシアによるウクライナ侵攻の初期、ウクライナ軍の対戦車ミサイル「ジャベリン」などによる戦車上面への攻撃、いわゆる「トップアタック」を脅威と捉えたロシア軍は、応急的な措置として戦車にバードケージ装甲を増設しています。しかし、その後の分析から、バードケージには対戦車ミサイルを防ぐ効果は薄いとされ、SNS上では逆にその不格好な見た目を嘲笑するかのような書き込みも見られるほどでした。
ロシア軍では効果が薄いとされたバードケージを、なぜイスラエル軍は「メルカバ」に増設したのでしょうか。
理由として考えられるのが、ドローンの存在です。10月7日の奇襲攻撃で、ハマスはRPG-7対戦車ロケットで使用するタンデム式のPG-7弾頭をクアッドコプター(4枚回転翼の小型ドローン)から投下し、少なくとも2両の「メルカバ」に損害を与えたことが、彼らの公開した映像から確認されています。このような戦果から、ドローンはとても安価ながら、高価な戦車を破壊できる「非対称な」兵器として注目されます。
なお、ハマスは個人携行式の対戦車ミサイルとして、ロシア製の9M113「コンクールス」や9M133「コルネット-E」、北朝鮮製の「火の鳥2」などを保有していますが、いずれもトップアタック能力は付与されていません。
大人対子供の喧嘩。