厳しすぎる!? 痴漢犯罪者への「デジタルさらし首」鉄道警察の本気がすごい 顔面も行為も全世界公開 英国

最新技術導入も、残る冤罪の心配

「痴漢は日本特有の文化」。そんなことをいう人もいますが、英国でも71%の女性がなんらかの痴漢被害を経験したことがあるそうで(国連女性機関の調査による)、3割以上の女性が電車や駅で痴漢にあったことがあると回答しています(イギリス鉄道警察による)。

 痴漢犯罪の難しさは、被害者が告発しないで我慢する場合が多いこと。「痴漢にあっても告発できなかった」「どうせ警察は動いてくれない」--イギリスでも多くの女性がそんな理由で声を上げないでいるようで、実際に起こっている痴漢被害の4%しか警察に届けがないというデータもあります。

 そんな現状を打破しようと、鉄道警察がついに動いたわけです。ほかにも痴漢被害にあったことがない男性などに最新技術のバーチャル・リアリティ(VR)の仮想空間で痴漢にあう体験をしてもらうことで、「被害者を助けなくては」という認識を高めたり、痴漢の被害報告をしやすいように専用アプリを開発したりと、努力を積み重ねてきました。その結果、痴漢告発件数は「ほぼ倍」になったそうです。

 危惧されるのは、冤罪です。もっとも英国では駅や電車内に15万台以上の防犯カメラが設置されていて、また、頻繁にパトロールしている警官や私服警官の服にもカメラが装着されています。言い逃れができないほどに犯行現場をバッチリ撮っているため、自信を持って「デジタルさらし首」に処せるのだろうと推察されます。

 ですが、警察に100%手違いがないとは思えません。特に疑問に感じるのは、逮捕前の容疑者の顔写真を公開することです。冤罪や、関係ない人の写真を取り違えて公開することがないと言い切れるのでしょうか。勝手な書き込みが独り歩きするネットの怖さを考えると、万が一の冤罪や人的ミスでの「デジタルさらし首」の恐ろしさに戦慄を覚えます。

 英国の鉄道警察に問い合わせたところ、「容疑者の顔写真は、該当人物が特定できた段階で法律にのっとってホームページから削除しています」ということですが、「鉄道警察が公開した容疑者の顔写真を載せた雑誌や新聞などの記事は削除されませんよね?」と再度問い合わせたところ、鉄道警察から明確な返答はありませんでした。「デジタルさらし首」の「デジタルタトゥ―」は、やはり残るようです。

 女性として、「痴漢は絶対に許さない」という心強い対策は待望の動きではありますが、デジタル時代の痴漢対策はまだ手探り段階にあるようです。

【了】

【画像】これが警察に「晒し上げ」された痴漢たちの「リアルな画像」です

テーマ特集「【記事まとめ】けしからん!ルールを守らない乗客・ドライバーたちの「事件簿」」へ

Writer: 赤川薫(アーティスト・鉄道ジャーナリスト)

アーティストとして米CNN、英The Guardian、独Deutsche Welle、英BBC Radioなどで紹介・掲載される一方、鉄道ジャーナリストとして日本のみならず英国の鉄道雑誌にも執筆。欧州各国、特に英国の鉄道界に広い人脈を持つ。慶応義塾大学文学部卒業後、ロンドン大学SOAS修士号。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。