「電気を運ぶ船」そろそろ動きだす? “新型船”も発表 「海を送電線にする」壮大プロジェクトの全貌
EV急速充電器の事業を先行させたベンチャー企業「パワーエックス」が本命とする「電気運搬船」の準備を着々と進めています。新たに、ややコストダウンさせた新しい船の計画も発表。複数種の電気運搬船を“適材適所”で使用していく方針です。
新会社設立&「電気運搬バージ」を新規につくる
世界初となる電気運搬船の実現に取り組むスタートアップ企業「パワーエックス(PowerX)」は2024年4月23日、電気運搬船の開発、販売を手掛ける子会社として「海上パワーグリッド」を設立したと発表しました。パワーエックスと海上パワーグリッドの社長を兼ねる伊藤正裕氏は「電気運搬船のアイデア前からあったが、これを新規事業として正式にローンチできるというところまで来た」と力を込めました。
パワーエックスは蓄電池型のEV(電気自動車)超急速充電器を先行して展開していますが、本来掲げていた電気運搬船「Power Ark」の開発も着々と進めています。今回はこれに加えて、推進機関を持たない電気運搬バージ「Power Barge」の開発を新たに発表。2種類の船を併用することで、運用効率と経済性の向上を図り、日本国内における海上送電ミッションの実現を目指すといいます。
伊藤社長は「海上パワーグリッドは海を送電線(パワーグリッド)として使う、まったく新しい電力の輸送方法を提案する会社だ」と説明します。
「海上パワーグリッドは船主の機能が最初に来る。電気運搬船自体を所有し、運航に関してはプロジェクトごとに判断していくことになると思う。洋上風力で使われる場合と、陸上の電力保管で使われる場合とでは、ビジネスモデルが異なってくる。海上パワーグリッドかグループ会社がSPC(特別目的会社)で船を保有した上で委託をお願いするケースもあるのではないか」(伊藤社長)
電気運搬船は、大型の蓄電池を大量に積載し、文字通り電力を“貨物”として運ぶ船というコンセプトで計画されました。
例えば原子力発電所や太陽光、風力などで発電した電気が余っている地域で、コンテナ型の蓄電池に充電を行って船に積載し、電気が足りない地域まで輸送するということが考えられます。また、陸上から海底ケーブルの敷設が困難なエリアに建設される洋上風力発電所からの電力輸送にも用いられることが想定されています。
一方で「船の安全基準はかなり高く、普通の蓄電池をそのまま乗せるわけにはいかない」と伊藤社長は話します。
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