乗組員のお楽しみ「船乗りの日曜日」とは? 独海軍の「激レア艦」でなぜか木曜に開催 カギ握るのは希少な軍人パン職人!
特別な訓練を受けた軍人のパン職人
長期にわたって航行を続ける「フランクフルト・アム・マイン」は、毎週、どこでケーキを調達しているのでしょうか。
ドイツ海軍の船には、かつて、調理人のほかに、ドイツ海軍の養成学校でパンとケーキの焼き方を特別に学んだ「軍人のパン職人」が必ず同乗していました。補給艦やフリゲートのような大型の船だけではなく、乗組員が30人ほどしかいない狭い潜水艦にも、パン職人が1人同乗していたくらい、軍艦には不可欠と考えられていた存在で、パンのクオリティには徹底したこだわりがあったのです。
現在では専門のパン職人を乗せている船は非常に稀になり、調理人が代わりに焼くことが増えたといいます。しかし、「フランクフルト・アム・マイン」には、そのような希少価値となった「軍人パン職人」の1人、アクセルさんが同乗し、腕を振るっているのです。長期間にわたり同じメンバーが勤務を続ける同艦では、「船乗りの日曜日」で全員が談笑して良い人間関係を保つことが一層大切なのかもしれません。
単調で気持ちが滅入りがちな船での長い生活で笑顔を保つ秘訣は、「おいしいパンやケーキを食べること」とアクセルさんは穏やかな笑顔で語っています。
実際には、どのようなケーキが振る舞われているのでしょうか。
マティアスさんに取材をした週の「船乗りの日曜日」(9月26日)は、チョコレートケーキだったようですが、パン職人のアクセルさんによると、ケーキにはフルーツが使われることも多いそうです。同艦が東京に寄港した際に補給した積み荷のリストには「果物」の文字がありましたが、日本産の果物も「船乗りの日曜日」のケーキに彩を添え、乗組員たちの笑顔の源になったのではないでしょうか。
【了】
Writer: 赤川薫(アーティスト・鉄道ジャーナリスト)
アーティストとして米CNN、英The Guardian、独Deutsche Welle、英BBC Radioなどで紹介・掲載される一方、鉄道ジャーナリストとして日本のみならず英国の鉄道雑誌にも執筆。欧州各国、特に英国の鉄道界に広い人脈を持つ。慶応義塾大学文学部卒業後、ロンドン大学SOAS修士号。
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