大ベテラン“日の丸飛行艇”後継どうするの? 老舗メーカーが開発する“無人飛行艇”その強みとは

新明和工業といえば、これまで海上自衛隊が運用する飛行艇「US-2」を開発・製造している企業として知られてきました。しかし、今後は有人機だけではなく、無人機事業にも本腰を入れて取り組んでいくようです。

無人機開発を本格化

新明和工業は、2024年10月16日から19日にかけて東京ビッグサイトにて行われた「国際航空宇宙展2024(JA2024)」にて、同社が開発中の無人飛行艇を展示しました。

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新明和工業のブースの外観(稲葉義泰撮影)。

 これは、無人飛行艇のプロトタイプである「XU-M」で、飛行艇としての機体形状や自動離着水技術を研究するため、2021年に開発されました。全長 3m×全幅 4m×全高 0.9mの電動固定翼機で、2022年には洋上での初飛行に成功しています。

 これまで、新明和工業といえば海上自衛隊が運用する飛行艇「US-2」を製造している企業として広く知られてきました。そんな企業が無人飛行艇の開発に乗り出した背景について、新明和工業によると、省人化や自動化という側面から今後、無人機の需要や必要性が高まってくると判断したためといいます。

 現在のところ、新明和工業としては無人飛行艇について民間での需要を意識して開発を進めているといい、その先に防衛関連の需要も見据えているといいます。想定される民間での需要としては、たとえば大学や研究機関での海洋科学調査や、海底パイプラインなどの保守作業、海洋汚染に関する調査など、多岐にわたります。

 現在、無人飛行艇については他の日本のスタートアップ企業においても開発および運用が進められているところです。そんな中で、新明和工業としての強みはなんと言っても、これまで60年以上にわたり積み重ねられてきた飛行艇開発の経験値です。とくに、離着水時の衝撃吸収やバランス、さらにどういった海域にどのタイミングで着水することが良いかなど、これまでの外洋における飛行艇運用により蓄積されたデータも活用して開発が進められているとのことです。

今回展示されたXU-Mはあくまで試験機であり、現在より本格的な無人飛行艇の開発が進められているとのことです。具体的には双胴(カタマラン)型の無人飛行艇で、これを今後5年から10年の間に実用化していくことを目指しているとのことです。

【了】

【これが老舗メーカーの無人機】新明和工業が展示した無人飛行艇(画像)

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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