新幹線「ノロノロ通過駅」ができたワケ 大減速を強いる「徳山カーブ」の事情 むしろお楽しみスポット?

「徳山カーブ」をむしろ楽しむ方法

 と、これだけ書くとネガティヴな印象が強いのですが、この「徳山カーブ」、見方を変えればとても素敵な景色を楽しむポイントにもなっています。

 山陽新幹線の徳山駅付近で堪能できる景色、それは「工場夜景」です。徳山駅がある山口県周南市は瀬戸内工業地域にあり、瀬戸内海に面して多くの工場が広がっています。その幻想的で美しい景色を、山陽新幹線の車窓から楽しむことができるのです。

 そしてその景色を行く新幹線は、「徳山カーブ」の存在ゆえに通過列車でも速度を落とすわけです。当初は計画されていなかった急カーブが、今となってはまるで工場夜景を楽しむためのカーブに……なんて言ったらロマンが過ぎるでしょうか。

 私(和田 稔:鉄道ライター)も初めて夜の徳山駅を通過した時には、その美しい光景に息を呑んで見入った記憶があります。なぜか減速する新幹線、突然視界に広がる工場群の灯り……。乗客の皆さんも驚くようで、スマートフォンを窓の外に向ける人を見かける機会も多くあります。

 周南市もこのことをPRしており、ウェブサイトではビュースポットや工場夜景ツアー、工場夜景の見えるホテルなどの観光情報を紹介しています。そんな美しい景色を、新幹線の窓からちょっとだけゆっくり覗けるなんて、なんだか贅沢なひと時ですね。

 ちなみに徳山の工場群は山陽新幹線の海側にあり、下り博多方面の列車は進行方向左側、上り新大阪方面の列車は進行方向右側に広がります。この景色を堪能したい人には窓側のA席がおすすめです。

【了】

【迫力の4線大カーブ】これが徳山駅をノロノロ通過する新幹線です(写真と地図)

Writer: 和田 稔(鉄道ライター)

幼少期、祖父に連れられJR越後線を眺める日々を過ごし鉄道好きに。会社員を経て、現在はフリーの鉄道ライターとして活動中。 鉄道誌『J train』(イカロス出版)などに寄稿、機関車・貨物列車を主軸としつつ、信号設備や配線、運行形態などの意味合いも探究する。多数の本とNゲージで部屋が埋め尽くされている。

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