乗客数と乗組員数が同じ 元日系企業の常識破り超豪華船プロジェクト
元は日系の会社だったクリスタル・クルーズ
の米国子会社として運営され、日本人のリピーターも多く存在しています。アメリカの旅行雑誌「コンデネスト・トラベラー」誌など、多くのメディアから“世界最高の客船(会社)”との評価を取得してきた高級クルーズのブランドでした。
ところが、「本業の海運業に力を注ぎたい」とする日本郵船が、5億5000万ドルでマレーシアに本拠を置くカジノ資本ゲンティングループにそれを売却。このゲンティンがどのような経営計画を打ち出すか、注目されていました。
ゲンティングループは香港にクルーズ関係の上場子会社を置き、米国のノルウェジャン・クルーズ(NCL)や台湾、香港、シンガポールをベースにしたスタークルーズなど、主として大衆向けの4ブランドを持つ世界3位のクルーズ会社グループです。そのためクリスタルの購入は、同社にとってのウィークポイントといえるラグジャリークラスのクルーズ部門を傘下に収めるプロジェクトでした。
ゲンティンとクリスタルは、新造船の計画の公表とともに、さらに3つの新しいプロジェクトについても明らかにしています。
そのひとつは、今年12月に就航する64人乗りの改装船「クリスタル・エスプリ」(3300総トン)によるヨットクルーズ。インド洋のセイシェルやベニスを基点にしたアドリア海のクルーズに就航させ、船尾から直接海に入って楽しむマリンスポーツや、小さな島々や港に寄港できるマリンライフに特化したクルーズを展開する予定です。船上には2人乗り潜水艇やゾディアックボートのほか、水上スキー、ウェイクボード、ジェットスキー、スキューバーダイビング、スノーケリング、魚釣りなどのギアも搭載します。
さらに2017年には、観光航空機事業も立ち上げます。ボーイング787を購入し、世界中の都市や秘境を訪ねる28日間程度の豪華ツアー事業を開始する計画です。
また同時に、2017年からはリバークルーズの会社もスタートさせるとしており、クリスタルクルーズが開拓してきた顧客をベースにハイエンドな乗客層を目指して、クルーズを軸とした事業展開を目指す予定です。
こうした動きについてクリスタル・クルーズファンのひとりは「驚くようなプロジェクトですが、これが日本企業による計画でなかったことがなんとも残念」と話しています。
【了】
Writer: 若勢敏美(船旅事業研究家)
1949年生まれ。業界紙を経て1980年、海事プレス社へ入社。1989年、雑誌『CRUISE』創刊に参画し、翌年から編集長。2008年、海事プレス社の社長へ就任。2012年退任。この間、取材、プライベートを含め35隻の客船に乗船して延べ55カ国を訪問。地方自治体や業界団体主催の講演会などに多数出席。
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