4161円使い収入100円 厳しい北の鉄路、廃止続く可能性

JR北海道は、利用の少ない線区について状況を発表。100円の収益をあげるのに4000円以上を要するなど、厳しい実態が明らかになりました。すでに一部区間が廃止に向け動き出している北海道の鉄路、それは“始まり”に過ぎないのかもしれません。

かつての「日本一の赤字線」より厳しい数字

 2015年11月6日(金)、JR北海道は2014年度における「利用が少ない線区」の収支状況を発表。最も収支状況が悪い線区は、100円の収益を得るのに費用を4161円も要していることが明らかになりました。

 100円の営業収益を得るために必要な営業費用の指数を「営業係数」といい、それが4161円、すなわち100円を得るのに4161円も要していることが明らかになったのは、留萌本線の留萌~増毛間16.7kmです。輸送密度(客営業キロ1kmあたりの1日平均旅客輸送人員)は、わずか39人/キロ/日。500万円の収益を得るために2億1200万円も要しています。

100円の営業収益をあげるのに4161円も要している留萌本線の留萌~増毛間(2007年2月、恵 知仁撮影)。

 かつて同じ北海道に、1974(昭和49)年度の営業係数が国鉄でワーストとなり、それを逆手にとって地元自治体が「日本一の赤字線」と宣伝した美幸線(美深~仁宇布)という路線がありました。しかし、そのときの営業係数は3859円。現在の留萌本線・留萌~増毛間のほうが、当時の「日本一の赤字線」より状況が悪いことになります。

 この「日本一の赤字線」美幸線は、1985(昭和60)年に全線が廃止されています。

営業係数1000円超えが4線区もある北海道

 JR北海道が今回、2014年度における「お客さまのご利用が少ない線区の収支状況」として挙げたのは留萌本線のほか、以下の線区です。

札沼線 北海道医療大学~新十津川 47.6km 営業係数:1909円
根室本線 富良野~新得 81.7km 営業係数:1430円
留萌本線 深川~留萌 50.1km 営業係数:1316円
石勝線 新夕張~夕張 16.1km 営業係数:1247円
根室本線 滝川~富良野 54.6km 営業係数:827円
宗谷本線 名寄~稚内 183.2km 営業係数:543円
釧網本線 東釧路~網走 166.2km 営業係数:522円
根室本線 釧路~根室 135.4km 営業係数:441円

 また、2015年1月から災害によって一部区間で列車の運休、バス代行が行われている日高本線(苫小牧~様似)146.5kmについては、そうした状況から単純に他路線との比較はできませんが、1022円という営業係数が出されています。

JR北海道における線区ごとの輸送密度。点線、赤線、橙線の順に利用者が少ない(画像出典:JR北海道)。

 JR北海道によると、その鉄道事業全体での営業キロは2499.8kmで、営業係数は154円とのこと。先出の数字と比べると小さく思えるかもしれませんが、収支で見ると、JR北海道の鉄道事業は2014年度、756億6400万円の営業収益をあげるために1171億3100万円の営業費用を要しており、414億6700万円もの赤字になっています。

留萌本線の廃止は“始まり”か

 JR北海道は2015年8月10日、営業係数が4161円とワーストである留萌本線の留萌~増毛間について、2016年度中に廃止する計画を明らかにしました。

 また同社は2015年9月30日、利用者が少ない列車とについて運転の見直し、廃止を行う方針を発表しています。

 そしてJR北海道の島田社長は今回2015年11月6日(金)、2015年度下期の決算に関する見通しについて、次のように話しています。

「鉄道運輸収入においてインバンドによる増収を見込むものの、営業費用において安全基盤強化のための工事などが下期に多く竣工することから、修繕費や減価償却費が増加すること、および(2016年3月の)新幹線の開業に向けて本格化した訓練運転や広告などの準備費用を見込むことから、営業損益は大きく悪化し、大幅な経常赤字となる厳しい見通しです」

 JR北海道は2015年度における事業運営の基本方針として、経営資源を「今後も増加が見込まれる札幌圏輸送」と「北海道新幹線開業により収益の拡大が期待できる都市間輸送」へ重点的に投入するとともに、「使用頻度の低い設備の使用停止」「ご利用が著しく少ない列車の見直し」を行い、“選択と集中”を進めるとしています。

廃止が伝えられている区間以外も状況が厳しい留萌本線(2012年10月、恵 知仁撮影)。

 こうしたなか、今回発表された線区ごとの厳しい収支状況と、同様に厳しい将来の見通し。すでに動き出している“筆頭”留萌本線・留萌~増毛間の廃止計画は、“始まり”に過ぎないのかもしれません。

【了】

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道ライター、イラストレーター。「鉄道」や「旅」に関する執筆活動や絵本の制作を行っているほか、鉄道車両のデザインにも携わる。子供の頃からの旅鉄&撮り鉄で、日本国内の鉄道はJR・私鉄の全線に乗車済み。完乗駅はJRが稚内で、私鉄が間藤。メインは「鉄道」だが、基本的に「乗りもの」好き。

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コメント

4件のコメント

  1. 国鉄の二の舞な事態が再発でしょうか!
    そもそも、北海道の鉄路で黒字は出るはずない事は民営化以前から分かりきっていた事では?
    公共性が高い鉄道は公的に支援しなければ、北海道以外にも全国各地でやっていけなくなります。
    儲けや損得だけを考えず立ち止まって未来の事を考えて議論を開始しないとならないのでは?

  2. 交通体系の再構築が必要。複線化、電化及び直線化、そして在来新幹線を走らせる。採算性も重要ですが、国の交通体系の基幹となる本線はこれらの手段で強化すべきです。その上で、地方路線はバス等の別の交通手段に変えるのが本筋!これらは北海道の責任で実施すべき!

  3. 最近は線区内でも細かく営業係数出すようになったのか? 国鉄末期からJR初期にかけて大量の線区が廃止になったときは線区全体の営業係数で廃止判断が行われていた。特定地方交通線指定の基準が同一線区全体の営業係数でジャッジしていたため江差線の木古内ー江差間よりも利用されていた松前線が先に廃止になるなどおかしなことがかつては起こっていた。

  4. この問題新幹線札幌延伸と合わせて考えたい。個人的にはこれ以上の新幹線の北進はやめた方が良いと思っている。だがしかし、北海道新幹線はどうせ作るのだから、それと引き換えに函館~札幌間の第三セクター化が行なわれるのと思う(ルート等はいろいろ検討されるだろうが)。貨物列車は廃止できないし、室蘭や千歳といった新幹線の恩恵を受けない地域の鉄道が第三セクター化される恐れもある。現に30年前運輸省は千歳線や室蘭本線も第三セクター化せよと発言している。こと新幹線開業に関しては、30年~50年前の方針が基本的にそのまま実行に移されている。またいまは都市路線の小樽~札幌間も第三セクター化せよというかもしれない。今JR北海道の収支が154円。全区間ならローカル線を含め第三セクターでもやれるかもしれない。札幌都市圏の鉄道交通一元化を保ち、北海道のローカル交通維持を合わせ考えると札幌新幹線開業と同時にJR北海道の残りの在来線区間全線区第三セクター化した方のが良いのではないか。JR北海道は新幹線会社のみにすれば良い。JR東日本と合併できれば良いのだが、民営会社化されており株主総会で了承されない恐れがあり、いくつかのローカル線復旧すらJR東日本は出来ないので、これ以上のお荷物を被ることは体質上困難だと思われる。大変だと思うが北海道の英断を望む。