不審火、遅延 船で揺れる三菱ブランド いまそこで何が?

のどに刺さった魚の骨が腫瘍に?

 こうした客船建造の混乱について三菱重工は、2016年2月4日(木)に行った2015年度第3四半期決算の説明において、事業部門と本社組織、それぞれの責任に言及しました。「プロトタイプ(新船型)だったこと」「キャビン1500室という仕事量の多さ」といった建造自体の難しさと合わせて、事業部に対しては設計や現場の力不足、事業部単独で対処できると考えた思い込みなどを、また本社に対しては、大型工事の受注におけるリスク管理能力の不足を反省点として挙げています。

 しかし、現場では「“宮永改革”の急ぎ過ぎでは」という声も少なくないようです。

 三菱重工では長年、「会社内会社」とも称された「事業本部制」と「事業所制」というふたつの事業推進体制がとられていました。

 そうしたなか、日立製作所との合併推進派としても知られた現社長の宮永氏は、様々な事業の分社や他社との統合を繰り返しながら、社内的には事業所型管理をやめるなど、体制を再編してきました。そしてこの過程で「シェアード・テクノロジー」と称し、事業部間における技術者の人事配置見直しも実施しています

 しかし、これによって造船が組み込まれている部門「交通・輸送ドメイン」のトップはもちろん、客船建造のプロジェクトリーダーから2015年に分社化された船舶海洋会社のトップまで、造船出身の技術者が不在という状況に。そのため「『ダイヤモンドプリンセス』建造中の火災事故(2002年)から10年以上も遠ざかっていた『客船建造』に、満を持してチャレンジしようとした矢先に行ったそうした体制変更が、工程遅延をこんなにも長期化させてしまったのでは」と指摘する声があります。

 2月4日(木)に行われた三菱重工の第3四半期決算発表と、その後の宮永社長による会見を見たある三菱重工OBは、「ドイツ向け客船の建造は、宮永さんの改革にとってのど元に刺さった魚の骨くらいに思っていたが、これはもう腫瘍のようだ」と感想を漏らしました。

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