「シリアを失ったロシア」がとんでもなくヤバイ理由 海外の超重要拠点が消滅!? 待つのは“しっぺ返し”か“全てカネで解決”か
2024年12月8日、長年にわたったシリア内戦が終結しました。しかし、これによってロシアが外交的にも軍事的にも要衝とみなしていた軍事基地を喪失する危機に直面しています。
ロシアの選択肢は3つ
とはいえ、前述したような理由から反体制派を中心とする新政権が、ロシアに対して友好的な姿勢を示すとはこれまた限りません。ロシア空軍による無差別爆撃は、多くのシリア国民の心に深い傷跡を残しており、新政府がロシアとの軍事協力に消極的になる可能性は十分にあります。
もしシリアの新政権がフメイミム空軍基地の継続使用を認めない場合、ロシアは大きな戦略的損失を被ることになります。中東における影響力の低下は避けられず、またアフリカへの兵力展開や物資輸送の中継拠点を失うことは、ロシアのアフリカにおけるプレゼンス縮小を意味し、アフリカでの影響力拡大を目指してきたロシアにとって、大きな痛手となると考えられます。フメイミム空軍基地からの撤退は、単に軍事拠点を失うという以上の意味を持ち、ロシアの中東・アフリカ戦略全体の見直しを迫る契機となるでしょう。
今後、考えられるロシアの選択肢は3つあります。
1つはシリア新政権とフメイミム空軍基地の維持で合意すること。これはロシア側が金で解決することを意味し、基地を維持するためのコストは大幅に増大すると考えられますが、中東やアフリカへの影響力は維持することができます。
2つめは期限を設けた平和的な撤退。この場合、ロシアは基地へ投じた資産の一部を本国に持ち帰ることが可能です。
そして3つめは交渉の決裂。この場合、フメイミム空軍基地は速やかに破壊・接収され、ロシアはすべてを失うことになります。
いずれにせよ、フメイミム空軍基地が現状維持を続けることはないでしょうから、ウクライナ戦争の進展と合わせて、こちらのシリア動向も要注目です。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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