日本の代表的客船「飛鳥」3代目登場か しかし多い課題、頓挫の可能性も
日本を代表する船が外国籍に? 自ら不利にしている日本
そして第3の課題は、「飛鳥III」を“日本国籍船”として就航させるかどうか、です。
国際海運やクルーズの制度として、どの国も「カボタージュ法」を施行しており、国内クルーズはその国籍の船でなければ実施できません。
現在、海外からやってくる客船のほとんどは、「便宜置籍船」と称して船の国籍をパナマやバハマなどの国へ置き、税金を抑えたり、乗員の国籍要件を緩和させ人件費を抑えるといったコスト対策を行っています。しかしその代わり、日本国内クルーズは実施できません。そのためクルーズ中に一度、韓国の釜山など外国の港にワンタッチするといった手法も使われます。
しかし日本船籍にすると、国内クルーズを実施できますが、以下のような国内法規の制約を受けることになります。
・オフィサー(航海士・機関士)は日本人に限る。
・60日に一度、海外に出る義務。
・同一寄港地や同じ航路のクルーズは年3回まで(定期船との差別化のため)。
・カジノの禁止。
・安全運航管理者の常設義務付け。
・消費税の付加、など。
このため日本のクルーズは「世界最高」ともいわれるほど料金が割高で、それが、日本におけるクルーズの大衆化を妨げている要因である、という説もあります。つまり「飛鳥III」を日本国籍船にするかどうかで、先述した「アジア市場進出」の成否など、同船の未来が大きく変わってくるのです。
しかしここで、次のような声も業界で上がっています。
「日本を代表するような新しい客船が登場するなら、この機会に規制を見直して、『カボタージュ法』は仕方がないにしても、“日本船が不利になる規定”だけは変更できないだろうか……」
この機会に、規制に関する議論を深められるかどうかによって「飛鳥III」、そして「日本船による日本人のためのクルーズ」の将来が左右されることになるかもしれません。
【了】
Writer: 若勢敏美(船旅事業研究家)
1949年生まれ。業界紙を経て1980年、海事プレス社へ入社。1989年、雑誌『CRUISE』創刊に参画し、翌年から編集長。2008年、海事プレス社の社長へ就任。2012年退任。この間、取材、プライベートを含め35隻の客船に乗船して延べ55カ国を訪問。地方自治体や業界団体主催の講演会などに多数出席。
休暇が取れない社会だからクルーズしたくても出来ない人が沢山居るだろうね