連結部分なんか変!! 江ノ電が “独特すぎる” 列車を使い続けるワケ JRや大手私鉄に波及しないのナゼ?

神奈川県を走る「江ノ電」の列車は、JRをはじめとした他社線ではほぼ見られない構造を採用しています。調べてみるとメリットが幾つもあるようですが、なぜなのでしょうか。デメリットとともに解説します。

連接車のメリット、デメリットは?

 海外ではTGVやユーロスター、アメリカで最も速い列車であるアムトラックの「アセラII」などアルストムが製造する車両では、両端の機関車に挟まる客車部分に連接車の構造を採用し、乗り心地の向上を図っています。ほかにも副次的な効果として、編成全体の台車数が減るので、車輪の転がり抵抗も減らすことができ、高速化にも貢献しています。

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江ノ電1000形の連接台車(咲村珠樹撮影)。

 このようなメリットがある連接車ですが、もちろんデメリットもあります。車両を切り離して整備する際、通常の車両ならば2つの台車がついているので簡単に1両ずつにできますが、連接車は車両の連結部に台車があるため、車体を支えるための仮台車が必要になってしまい、特別な手間がかかるのです。

 このほか鉄道路線における車両の規格には、カーブの通過半径から台車間の距離を統一するというものもあり、これに従うと連接車は通常の車両より車体長が短くなってしまい、ドアの位置を揃えるのが難しくなります。近年では安全対策でホームドアを設置する例が増えていますが、これも連接車と通常の車両を併用しにくくさせている一因といえるでしょう。

 これに対し、先に言及した江ノ電のほか、東急世田谷線では車両を連接車に統一することで、これらのデメリットを解消しています。どちらもほかの路線とは独立した存在であり、車両の規格を統一しやすいという点が共通しています。

 カーブでの通過性能や乗り心地といった点でメリットのある連接車ですが、その特殊な構造ゆえ採用例は少なく、珍しい存在です。首都圏では連接車の走る路線が2つもあるので、お出かけの際は車体の下にある台車の位置にも注目してみてください。

【比べると一目瞭然!】連接車のメリット 江ノ電が採用する理由です(写真)

Writer:

ゲーム誌の編集を経て独立。航空宇宙、鉄道、ミリタリーを中心としつつ、近代建築、民俗学(宮崎民俗学会員)、アニメの分野でも活動する。2019年にシリーズが終了したレッドブル・エアレースでは公式ガイドブックを担当し、競技面をはじめ機体構造の考察など、造詣の深さにおいては日本屈指。

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