超豪華フェリーだけど「40時間!」 国内最長「太平洋フェリー」長距離が好調のワケ 結局コスパがいい!?
名古屋港―仙台港―苫小牧港を結ぶ国内最長の定期航路を運航する太平洋フェリー。名古屋まで乗り通せば約40時間かかりますが、それでも、その長い航路が人気を集めているようです。どう利用されているのでしょうか。
甲板で繰り広げられる「大イベント」を作ってます
名古屋―仙台間の所要時間は約21時間40分。北行きの場合、名古屋を19時に出港した船が仙台に到着するのは翌日夕方の16時40分です。南行きは仙台を12時50分に出港し、名古屋には翌朝の10時30分に到着します。

そして名古屋から苫小牧まで通しで乗った場合、航海距離は約1330km、所要時間はなんと約40時間にもなります。
名古屋―仙台航路に乗船すると14時半くらいに福島県相馬沖で太平洋フェリー同士がすれ違う姿を見ることができますが、これも豪華な船内設備やショー、ライブなどとともに、乗客を飽きさせない工夫のひとつです。
「カーフェリーというと、夜中にすれ違ったり、見えてもすごく遠かったりしますが、お客様向けのサービスとして、あえて近くに船を寄せて汽笛を鳴らし合いながら手を振る体験は、船旅の思い出としてきっと皆様の心に残ると思います」と榎本さんは話していました。
名古屋-仙台が好調!
興味深いのは近年、名古屋―仙台航路の利用が貨物・旅客共に増加しているということ。名古屋―苫小牧を通して乗る乗船客も100人以上いる場合があり、日によっては個室が全て埋まっているということもあるほどです。
榎本さんは利用者が増加している理由について「自分で運転するよりフェリーでゆったり旅を楽しみながら移動したいという需要に加えて、他のコスト上昇にも要因があるのではないか」と話します。
「例えば名古屋から仙台まで乗用車で移動する際、距離が長いので途中で1泊しようという方も多いと思います。しかし昨今ではホテル代が従来に比べて高騰しているため、高速代や燃料代と合わせるとかなりの出費となります。そうであれば、船に乗った方が長距離運転からも解放されてゆったり過ごせますし、総合的にパフォーマンスが高いと判断する方も増えているのではないでしょうか。貨物に関してはドライバー不足や残業規制といった要因もあると思います」
また、名古屋―仙台航路では首都圏発の周遊型ツアーによる利用も増えています。東京から東北に来て観光したのち、フェリーで名古屋へ行き、伊勢や信州、北陸などを巡るパターンと、最初に東海方面へ行ってフェリーで仙台へ向かい、宮城県や山形県の温泉泊まって、次の日に帰るというパターンが人気です。
榎本さんはこれについて「フェリーそのものが、その旅の目的地の一つとして受け入れられていると感じます」と嬉しそうに語ります。
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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