自動車税、減税なるか より公平な税負担 問題は代替財源

実は安い「燃料税」、しかし…税制改革は一利一害?

 自動車関連で真っ先に候補になりそうなのは、エコカー減税の縮小ですが、それではプラスマイナスゼロ。自動車の需要喚起にはなりません。

 続いて候補になるのは燃料税(揮発油税や軽油引取税)です。実は日本は、燃料税に関しては先進諸国のなかで安いほうだからです。日本の燃料税は、ガソリンが48.6円/L、軽油が32.1円/Lです。アメリカは例外的にバカ安ですが、欧州諸国はガソリンや軽油におおむね90円前後/Lの税金を課しています。

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日本の燃料税は、ガソリンが48.6円/L、軽油が32.1円/L(2016年7月、下山光晴撮影)。

 燃料税を含めると、自動車所有者の平均納税額は、日本より欧州諸国のほうがおしなべて高くなります。「日本の自動車諸税は世界的に見て猛烈に高い」という説がありますが、実は高いのは保有税だけで、購入時にかかる税や燃料税は高くないのです。

 持っているだけで課税される保有税を下げて、走った分だけ課税される燃料税を上げたほうが、省エネに直結するという見方もできるでしょう。

 しかしこれを実行すると、走行距離の長い運送業界にとって大打撃となります。ただでさえ経営が苦しく、ドライバーの低賃金重労働が問題になっている運送業界としては、これまた到底受け入れられないでしょう。

 では地方県に泣いてもらって、自動車税を下げるだけがベストなのかというと、そのぶんクルマがないとどこにも行けない“クルマ社会”化が加速し、地方の公共交通機関をさらに衰退させる面もあります。

 結局八方ふさがりで、いい解決策は見つかりませんが、税制は国のあり方を決めるもの。日本をどんな国にしたいのか、その理念によって税制を決めるべき――としかいいようがありません。

【了】

Writer: 清水草一(首都高研究家)

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で、首都高研究家/交通ジャーナリストとして活動中。

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コメント

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3件のコメント

  1. 確かに欧州では燃料に関わる税金は高い。しかし、一部の橋梁等を除いては、有料道路が少ない。居住していたイギリスではモーターウェイは、70マイル/時(110km/時)が制限速度の高速道路で、全国無料だった。こうした付帯的な条件も含めて比較せずに税金の高低を論じると、国民の理解をミスリードすることになると思う。、

  2. まあいずれにせよ今の政権には何も期待できない。

  3. 道路特定財源を一般財源化したんだから、取り過ぎているんだろう。エコカー減税も車重による区分はおかしいんじゃないでしょうか。業界団体などの無い取りやすいところから取って、大メーカーを優遇する悪しき税制の典型ですね。