韓国が「原子力潜水艦」持つってマジ!? トランプ大統領も「イイよ!」米本土で建造の可能性 “日の丸原潜”誕生にも影響か?

ドナルド・トランプ大統領は訪韓中の2025年10月30日、韓国向けの原子力潜水艦建造を承認しました。なぜ韓国は原子力潜水艦を欲しているのでしょうか。

米韓首脳会談でトランプ大統領が承認

 ドナルド・トランプ大統領は2025年10月30日、韓国向けの原子力潜水艦建造を承認したと発表しました。

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韓国が独自開発した島山安昌浩(トサンアンチャンホ)級潜水艦。排水量は3300トン、全長は83.5mで、機関はディーゼル・エレクトリック。燃料電池を併用するAIP(非大気依存推進)式である(画像:大韓民国海軍)。

 そもそも、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は、29日に開かれた首脳会談で北朝鮮や中国の脅威を理由に、原子力潜水艦の導入をすることについて、アメリカ政府に理解を求めていました。

 今回の米韓首脳会談の結果、韓国による3500億ドル(約53兆円)規模の対米投資の詳細も決まっており、うち2000億ドルが現金による直接投資、1500億ドルが造船分野への投資となっています。トランプ大統領は「我が国の造船業は間もなく大復活を遂げる」とSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿しています。

 李大統領は会談の席上、「ディーゼル動力の潜水艦は潜航能力が低く、北朝鮮や中国の潜水艦に対する追跡活動に制限がある」と述べ、「原子力潜水艦で使用する燃料の供給が認められれば、韓国の技術で通常兵器を搭載した潜水艦を複数隻建造する。それらを朝鮮半島の周辺海域で活動させれば、アメリカ軍の負担もかなり減らせる」とメリットを強調し、アメリカ側の理解を求めていました。また、ウラン濃縮や使用済み核燃料の再処理に制限がかかっていた米韓原子力協定の改定も要請しています。

 これに対してトランプ大統領は好意的に受け止め、会談後に「私は韓国に対し、現行の旧式で機動性に劣るディーゼル潜水艦ではなく、原子力潜水艦の建造を承認した」と書き込んでいます。

 なお、建造ヤードは2024年に韓国の大手財閥ハンファグループのハンファシステムズとハンファオーシャン(旧大宇造船海洋)が1億ドルで買収したハンファ・フィリー造船所になると推察されています。現在、同造船所では3600TEU型のLNG(液化天然ガス)コンテナ船や米運輸省海事局(MARAD)の国家安全保障多目的船 (NSMV)が建造中です。

 ハンファは韓国海軍向けの潜水艦の建造で実績を積み重ねていることに加え、防衛分野全体を通じて海外への輸出や米国との連携に積極的な取り組みを見せており、もし原子力潜水艦の建造が実現すれば、市場における存在感をさらに高める可能性があります。

 10月22日には3600トン級潜水艦「張保皐(チャンボゴ)III Batch-II」の1番艦として建造が進められている「蔣英実(チャン・ヨンシル)」が同社の巨済事業所で命名・進水式が行われました。

 原子力潜水艦となることが見込まれる「Batch-III」に関して韓国海軍は5000トン級の船体となり、早くても竣工は2030年代半ば以降との認識を示しています。一方でフィリー造船所は潜水艦の新造に必要な設備がないため、実際に建造するとなれば多くの課題を乗り越える必要があるでしょう。

 韓国が周辺情勢の緊迫化と米軍の負担軽減を理由に、原子力潜水艦の導入を求め、アメリカがこれに応えたことで、日本でも原子力潜水艦の保有に関する議論がさらに活発化するかもしれません。

【写真】できたばかり! 韓国初のリチウムイオン電池搭載潜水艦です

Writer:

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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