台風観測、なぜあえて飛行機で? 計画主導者とパイロットに聞く、理由やリスクとそのリアル
より強くなる台風? あえて航空機で観測する理由
日本における航空機による台風の観測は、1987(昭和62)年まで米軍が行っていましたが、経費がかかることや、気象衛星から強度や位置を推定できるようになったことから中止されました。しかし坪木教授によると、そのことによる問題点があらわになってきたといいます。
「それほど強くない台風の強度などについては、日本の気象庁と米国の気象機関『合同台風警報センター』が出す値はよく合っています。しかし『猛烈な台風』あるいは『スーパー台風』となると、航空機による観測の中止以降、違いがどんどんと大きくなってきていて、たとえば『猛烈な台風』の数を数えると、気象庁が毎年1個程度なのに対し、合同台風警報センターは6個から8個になっています」(坪木教授)
「スーパー台風」とは、最大瞬間風速70m/s(252km/h)の、ほぼ新幹線のスピードに匹敵する強風を発生させる台風を意味します。1959(昭和34)年に、死者行方不明者5000人以上という未曾有の被害をもたらした「伊勢湾台風」がその代表例です。そしてこのような非常に強い台風、猛烈な台風、スーパー台風となるほど、その強度の推定について「精度は悪くなる」といいます。
「近年、地球温暖化が進んでいますが、今後、スーパー台風などの『強い台風がより強くなる』という予測がでています。そのような状況のなかで防災上、最も重要な情報である台風の強度、特に強い台風の強度をより正確に推定し予測することは非常に重要です。台風は海上で発生・発達しますので、地上からの観測はできません。また、台風のある海域では船による観測もできず、航空機が直接の観測をする唯一の手段となります」(坪木教授)
では実際に、どのように飛行機で台風を観測するのでしょうか。
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