日本初の原子力船→世界最大級の海洋観測船に劇的チェンジ!「唯一無二の激レア船」関係者が語った「みらい」への思い

2025年12月、世界最大級の海洋研究船「みらい」が28年の現役生活を終えました。その正体は、1970年に誕生した日本初の原子力船「むつ」。船体を切断・改造してまで「研究船」として再生した波乱万丈な歴史を振り返ります。

原子炉を撤去し、船体を二つに切り離して挑んだ「再生手術」

 JAMSTECで北極研究に携わっている藤原周さんは「『みらい』の総乗船日数は2年近く。大人になってからは実家に帰っている日数よりも長く『みらい』に乗り込んでいます。だからか、船内に入ってディーゼルの匂いを嗅ぐだけで嬉しくなってしまう」と話していました。

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横須賀港で最後の一般公開を行う「みらい」(深水千翔撮影)。

 とはいえ、「みらい」は最初から海洋地球研究船として建造されたわけではありません。そもそも同船は日本原子力船開発事業団が保有する日本初の原子力船「むつ」として誕生しています。

 建造は半世紀以上前で、石川島播磨重工業(IHI)の東京第2工場(現アーバンドックららぽーと豊洲)で起工、1970年に船体が完成したものの、運用開始直後に放射線漏れが発生。世論の大きな反発による計画の遅れや、政府の財政難による事業の見直しなどがあり、1992年に原子力船としての実験航海が終了することになりました。

「むつ」の改造に当たっては、まず原子炉区画の前後で船体を切断。原子炉区画が撤去された船体は台船に載せられて関根浜港(青森県)から東京湾へと運ばれました。船体前部は、生誕の地であるIHI東京第1工場(第2工場から改称)で改造され、船首外板の耐氷構造化やバウスラスター、ソナードームの設置などが行われています。

 一方、船体後部は三菱重工業の下関造船所で、ディーゼルエンジンの搭載や2軸の可変ピッチプロペラへの換装などが行われましたが、こちらは改造というより、ほぼ新造に近い工事となっています。

 前部と後部の船体が接合され、1996年8月にIHI東京第1工場で2度目の進水式を迎えた「みらい」は、再び三菱重工下関造船所へ向かい観測装置や旧ドップラーレーダーを搭載。そして1997年9月に竣工しました。

 JAMSTECの山室悠太さんは「完全に一から建造したらこれだけの規模の研究船にはならなかった。『むつ』から改造したからこそ荒天に強い大きな船になったのではないか」と話していました。

 2026年2月現在、JMU(ジャパンマリンユナイテッド)横浜事業所磯子工場では後継に当たる砕氷型の北極域研究船「みらいII」(1万3000総トン)の建造が進められています。同船の竣工予定は2026年11月。「みらい」から「みらいII」へのバトンタッチと共に、日本の海洋研究は新しい時代を迎えます。

【写真】もう乗れません! 世界最大級の海洋観測船「みらい」ディテールをイッキ見

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1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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