「満席は難しい便」ANA、なぜ飛ばすのか? 物理的に容易でない成田~メキシコシティ線(写真10枚)

ANAのメキシコシティ発成田行きNH179便は、満席での運航が、物理的にかんたんではない便です。なぜそのような便を、ANAは飛ばすのでしょうか。日本とメキシコを結ぶ空でいま、火花が散っています。

複数ある、容易でない物理的な理由

「満席」は物理的に難しい便、なぜANAは飛ばすのか(2分24秒)。

 ANA(全日空)が運航しているメキシコシティ発成田行きNH179便は、条件にもよりますが、満席での出発が“物理的に”難しい便です。

 理由としてまず挙げられるのは、ANA最長路線で、直行便で、西へ飛ぶこと。成田~メキシコシティ間の基本マイルは7003マイル(約11270km)。ANA最長の路線で、かつ経由地で給油しない直行便であり、偏西風に逆らう西行き。離陸時に多くの燃料が必要で、機体が重くなります。ちなみに、成田~ニューヨーク間の基本マイルは6723マイルです。

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メキシコシティ国際空港に到着したANAのボーイング787-8型機(2018年1月、恵 知仁撮影)。

 次に挙げられるのは、メキシコシティ国際空港(ベニート・フアレス国際空港)の標高が高いこと。2230mと、富士山5合目と同等です。そのため空気(酸素)が薄く、標高が低い場所にある空港と比べ揚力が減少するほか、エンジンパワーも出にくいため、離陸時の滑走距離が長くなります。

 そしてもうひとつは、暑いことです。メキシコシティは高地にありますが、その割に気温が高く、最高気温は年平均で約25℃(気象庁〈日本〉のデータから計算)。気温が高いと揚力が弱まるため、離陸時の滑走距離が長くなります。

 こうしたことから、そのほかの条件にもよりますが、乗客数を制限して軽くしないと、約4kmの滑走路を全部使っても、メキシコシティ国際空港からの離陸が難しいのです。ANAは成田~メキシコシティ線に、燃費の良いボーイング787-8型機(169席:ビジネス46席、プレミアムエコノミー21席、エコノミー102席)の、特にエンジン性能を高めた機体を投入していますが、それでもです。

 ANAの成田~メキシコシティ線は、成田発のNH180便がメキシコシティへ13時55分に到着したのち、折り返しの成田行きNH179便は午前1時00分の出発と、時間があいています。夜になって気温が下がり、離陸しやすくなるのを待つためです(成田空港に着陸できるのが6時から23時までであることも関係)。

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コメント

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6件のコメント

  1. 既存他社が飛ばしていた路線にダブルトラックを仕掛けることが“先駆ける”という表現になるのか?
    記事云々の前に、なんかこう・・・。

  2. 羽田や成田からだと儲からないかもしれない路線ですらガンガン飛ばすのに、関空だと中国路線だけ、それ以外だとコードシェアでお茶濁すANAのヨイショされてもなぁ……。

  3. 興味を持って記事を拝見しました。
    この記事の中に「偏西風に逆らう西行き。」とありますが、西行きは偏西風に乗って飛ぶのではないでしょうか。私の勘違いでなければ、東行きが偏西風に逆らうルートだと思いますが。

    • 偏西風は「西から東」へ吹く風ですので、記事の「偏西風に逆らう西行き」という文言は間違っていません。
      「東から西」へ吹く風は赤道付近の「(北東/南東)貿易風」、もしくは極付近の「極偏東風」です。

    • 私もはじめ、西と東が逆かな? と思いましたが、本文の1行目に「メキシコシティ発成田行きNH179便は」とあるので、向きは正しいですね。以降の文章で成田~メキシコシティとなるし、国際路線の紹介記事はたいてい、日本から海外という書き方になるので、その先入観があるとさらにややこしい。1行目に、「成田~メキシコシティ線は、行きは追い風、帰りは逆風」とでも置けば読みやすかったと思います。

    • 細かい事を言えば、メキシコシティは北緯19度なので貿易風のエリア(南北ともに概ね緯度30度以下)にありますが、飛行ルートは大圏コースに近い北寄りになるので偏西風の影響を受けます。