【鉄道車両のDNA】相鉄の車両に息づく“こだわり”のルーツをたどる

相鉄は路線距離が大手私鉄16社のなかで最も短いですが、車両は個性的なものが多いといえます。各車の特徴から相鉄に息づく“DNA”を探ります。

3グループに分けられる相鉄の車両たち

 横浜駅を起点に2路線35.9kmの路線網を持つ相模鉄道(相鉄)。大手私鉄16社のなかでは営業距離が最も短い会社ではありますが、その歴史的背景から、とても個性的な車両が行き交っています。

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相鉄は営業距離こそ短いが個性的な車両が多い。写真は7000系(画像:photolibrary)。

 相鉄線を現在走っている車両は41編成398両(事業用車除く)。大きく分けて3グループに分けられます。ひとつ目は7000系、新7000系、8000系、9000系の4形式。ふたつ目は10000系と11000系の2形式、そしてみっつ目は20000系1形式です。

 このなかで最も“相鉄の車両”として強いイメージを持たれるのは、ひとつ目のグループでしょう。ここには27編成268両が含まれ、最も大きな割合を占めています。これらは特徴的なアルミ車体と、車内外にある他社にはあまりない独特な機器群が取り付けられ、相鉄の“こだわり”が凝縮されています。

 一方、JR東日本の通勤型車両に準拠した車両がふたつ目の車両群で、車内に入るとJR東日本の電車に乗っているかのように錯覚してしまいそうです。これらはステンレス車体で、ひとつ目のグループとは構造も大きく異なります。 そして2018年に登場したのがみっつ目のグループになる20000系です。まだ1編成しかありませんが、これまでの2グループの良いところを取り入れた車両と独特なフロントデザインが特徴の車両になっています。

 今回は最も“こだわり”をもって作られているひとつめのグループの車両が生まれた背景や進化の経緯を見てみましょう。

直角カルダン駆動と外付けディスクブレーキを採用した理由

 相鉄の歴史は第2次世界大戦前後で大きく分かれ、現在の横浜~海老名間をメインとする路線は第2次世界大戦後に成立します。そのころの相鉄は資材不足のなか、東急、京急、小田急、国鉄から車両を譲り受けつつ運行していました。そのため、車両の長さや車体幅が大きく違う車両が行き交うことになり、車体の長さで15m級の1000系、17m級の2000系、20m級の3000系と3形式に分けられていました。

 相鉄初の自社新造車は1955(昭和30)年から1960(昭和35)年にかけて日立製作所で製造された5000系です。モノコック構造の軽量車体や直角カルダン駆動、ボディマウント構造といった当時の最新技術が取り入れた車両でした。ここで日立製作所製を主力とし、直角カルダン駆動の利用という相鉄の車両における特徴の第1段階が見られます。

 そして次に登場する新造車が6000系です。こちらも日立製作所製で1961(昭和36)年から1970(昭和45)年にかけて製造されました。直角カルダン駆動の導入に追加して20m級4扉車の車体の導入、ディスクブレーキの外付けが行われ、相鉄の特徴ある車両の基本形を作った形式として知られています。さらには「経済化」が行われ、付随車を導入し、編成の組み替えが容易なようにしたことが大きな特徴でした。

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外付けディスクブレーキを搭載した9000系の台車(2018年6月、鳴海 侑撮影)。

 さらに、1970(昭和45)年から1974(昭和49)年にかけて製造された「新6000系」と呼ばれる6000系の後期車両群では、行先表示幕やライトの位置を変更したうえで、その後のフロントデザインの基礎を作り、裾絞り車体を採用して全幅2930mmという大型車体を実現しました。

 こうした車両が登場した背景には、1950年代後半から1960年代前半に大きく進んだ、横浜駅周辺再開発や希望ヶ丘駅をはじめとした住宅開発による輸送量の大幅な増加がありました。そのため、技術の粋を生かした5000形とは違って将来の輸送量増大や、それに伴う編成の組み替えに容易に対応できる車両の開発が志向されたのです。

 また、直角カルダン駆動やディスクブレーキの外側装着も保守の容易さから導入されたもので、実は相鉄の車両における特徴は成長期の車両らしい、堅実性を重視したところからきているのです。

アルミボディと自動窓の登場

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Writer:

1990年、神奈川県生まれ。私鉄沿線で育ち、高校生の時に地方私鉄とまちとの関係性を研究したことをきっかけに全国のまちを訪ね歩いている。現在はまちコトメディア「matinote」をはじめ、複数のwebメディアでまちや交通に関する記事を執筆している。

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