「移動式銀行」なぜいま注目 地方向けサービスから都市へ 呼べば「ATMが来る」時代に?

都市でも移動式ATM いずれは「呼べば来る」時代へ?

 大手銀行の系列会社も移動式ATMに着目しています。三菱UFJフィナンシャル・グループのフィンテック(IT技術などを駆使した金融商品・サービス)開発を担うJDD(Japan Digital Design/東京都中央区)は、2018年4月に鹿児島銀行と提携し、移動式ATM車を用いた「ATMシェアリングサービス」の実証実験を行うべく開発を進めています。9月にもサービスを開始する予定だそうですが、その詳細をJDDに聞きました。

――どのようなサービスなのでしょうか?

 イベントや花火、ライブ会場などへ要請を受けて移動式ATMを出張させるのがメインとなります。他行は災害派遣や過疎地における「金融弱者」への対応が中心で、3トンから5トントラックに窓口も備えた移動式店舗が多いのですが、当方の移動式ATMは出金機能だけに特化し、非常にコンパクトな商用ライトバンで行います。

――鹿児島において、鹿児島銀行のATMで実験を行うのでしょうか?

 いえ、鹿児島銀行のATMを搭載しますが、出張場所としては首都圏を想定しています。鹿児島銀行は実験パートナーであり、スピード感をもって実験を進めていくうえで、三菱UFJフィナンシャル・グループでは対応が難しい面があることから、これに取り組んでいる同銀と提携したものです。当然ながら、首都圏のお客様にとっては他行ATMとなるケースが多くなりますので、利用手数料の案内などをしっかり行うつもりです。

――なぜ導入するのでしょうか?

 世界的に「キャッシュレス化」の流れはあるものの、日本ではまだまだ現金ニーズは多いのが現状です。実験を通じ、一時的な現金ニーズが発生する場所や、ATMが近くにない場所に出張し、現金の利便性に対する課題の洗い出しをすることを狙いとしています。とはいえ収益性も大事ですので、ATMの手数料でそれを確保するつもりです。

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JDDによる「ATMシェアリングサービス」のイメージ(画像:JDD)。

※ ※ ※

 JDDは将来的に、ATMを含めた銀行の機能が、ユーザーのもとに「来る」という形を目指すとのこと。たとえば1万円を下したい場合に、スマートフォンでATMを呼び出すと「3分で到着します」と応答、自分のもとに移動式ATMがやってくるといった未来を想定しています。「この実現には越えなければならないテクノロジー的な課題も多いですが、AIによるニーズ予測や、自動運転の導入などで、より便利な金融サービスを提供することに取り組みます」と話します。

【了】

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