【都市鉄道の歴史をたどる】地下鉄工事はどう変わったか 「開削」から「シールド」へ

地下鉄の工事で必ず建設されるのがトンネル。山間部のトンネルと異なり、通常はトンネルの上に市街地があります。これらに影響しないよう慎重に建設しなければなりません。その工事方法の移り変わりを見てみましょう。

工事期間の短縮にトンネル工法の歴史あり

 道路下に巨大な地下構造物を構築する地下鉄工事。先の見えない地下空間で、慎重かつ大胆に掘削を進めていかねばならないことから、かつては想定外のトラブルで工事が難航し、工期が延びるということも多々ありました。

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地下鉄のトンネル工事方法は長い歴史の積み重ねのなかで進化した(2008年6月、草町義和撮影)。

 しかしいまでは、100年を超える地下鉄建設の長い歴史の積み重ねのなかで標準的な工法が確立され、安全かつ安定して工事が進められるようになりました。

 たとえば、日本で最も新しい地下鉄路線である仙台市地下鉄東西線は2007(平成19)年に着工し、2015年に開業しています。東京で最も新しい東京メトロ副都心線は2001(平成13)年に着工して2008(平成20)年に開業。大阪メトロ今里筋線も2000(平成12)年に着工し2006(平成18)年に開業するなど、近年の地下鉄工事はおおむね着工から6~7年ほどで開業していることが分かります。

 これらの路線は、まず駅の部分を地上から掘り下げ、駅の建設と同時にシールドマシンの発進基地を設置します。そして各駅から発進したシールドマシンが、トンネルを一斉に掘り進めることでトンネルがひとつにつながります。

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地下鉄の駅は上から下へ掘り進む開削工法で建設するのが一般的だ(草町義和撮影)。
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地下鉄のトンネルは駅の部分を除きシールドマシンを使って掘削することが多くなった(草町義和撮影)。

 地上から掘り下げる工事を「開削工法」、シールドマシンを使ってトンネルを掘り進める工事を「シールド工法」といいます。これを併用することで、地上にできるだけ影響を及ぼさずに、工事を同時並行で効率よく進めることができるようになったのです。

 現在に至るまでの、地下鉄建設技術の歴史を振り返ってみましょう。

上から掘り進む「開削工法」の誕生

 1863(文久3)年に開業した世界初の地下鉄、英国ロンドンのメトロポリタン鉄道はほとんどの区間が開削工法によって建設されました。工事は路面から10mほど掘り下げ、トンネルを作ったあとにふたをする手順で進められました。

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メトロポリタン鉄道の建設工事の様子(出典:『The Illustrated London News』)。

 現在の開削工法と基本的にやっていることは同じなのですが、地上の住宅を取り壊し、地上から大穴を掘っていったために、工事期間中は道路交通が一層悪化するなど、大きな問題となりました。

 もちろん、地下鉄が開通すれば混雑は解消されますが、数年にわたる工事期間中、都市機能を大きく低下させることはできません。地下鉄工事の困難さは、技術的な面だけでなく、道路交通や歩行者の安全、既設のインフラなどに影響を与えずに工事を遂行することにありますが、その課題は最初の工事から浮き彫りになっていたのです。

 また鉄道会社としても、立ち退きに多額の補償金を必要とする工事方法では経営が成り立ちません。道路の機能を維持したまま、道路の下に地下鉄を建設することができれば、技術と経営の両面で地下鉄整備のハードルが下がります。

 現在行われているように、掘削現場の上を覆工板と呼ばれる板で覆い、道路交通を確保しながら掘削を進める工事手法は1896(明治29)年、世界で3番目の地下鉄として開業したハンガリーのブダペスト地下鉄で初めて用いられたといわれています。工法が確立したことで、19世紀末から20世紀にかけて世界各地で地下鉄が建設されるようになったのです。

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Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)

東京メトロ勤務を経て2017年に独立。江東区・江戸川区を走った幻の電車「城東電気軌道」の研究や、東京の都市交通史を中心としたブログ「Rail to Utopia」を中心に活動をしている。鉄道史学会所属。

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