タクシー「行灯」誕生の背景 元々「社名表示」は目的じゃなかった 老舗メーカーに聞く
タクシーの屋根にはなぜ「行灯」がついているのでしょうか。正式には社名表示灯といいますが、もともとの目的は「防犯のため」だそうです。この行灯を考案した製造メーカーに話を聞きました。
小さな「防犯灯」から始まった行灯
タクシーのシンボルといえば、屋根についている「行灯(あんどん)」。正式には「社名表示灯」といい、法人タクシーでは会社ごと、あるいは企業グループごとに異なるデザインのものが見られます。個人タクシーでは、全個連(全国個人タクシー連合会)系は「でんでん虫」、日個連(日本個人タクシー連合会)系は「ちょうちん」と、所属する連合会の統一的な行灯が付けられることが一般的です。
この行灯、そもそもなぜ付いているのでしょうか。東京ハイヤー・タクシー協会によると、もともとは「防犯のため」とのこと。「ドライバーが強盗に遭うなどの緊急時に、赤く点滅させてSOSのサインを出すため」といいます。
行灯が生まれた背景について、業界シェアの9割ほどを占める製造メーカーの武内工業所(東京都港区)に聞きました。
――行灯はなぜ生まれたのでしょうか?
昭和20年代、タクシーの台数が増えていくなかで、タクシー強盗も頻発しました。そこで当社の先代社長が、非常時に赤く点滅する防犯灯を考案したのが始まりです。最初は小さな電球をカバーで覆ったもので、徐々に広まっていきましたが、この防犯灯に社名を表示したことで、一気に全国へと普及しました。
現在、行灯は国からの通達で、タクシーには必ず取り付けることとされています。行灯があれば、防犯面だけでなく、いわゆる「白タク」(国から許可を得ていない白ナンバー車両による違法タクシー)との見分けもつきやくなります。
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