【空から撮った鉄道】それは偶然の出会い 「East i」が行く新幹線の分岐

日本の要所へ次々と足を伸ばしている新幹線網は、在来線と同じように新幹線同士で分岐する箇所がいくつかあります。そのうちのひとつ、大宮の分岐箇所を紹介しましょう。

引退間近の200系とのすれ違いも

 現在、新幹線の分岐箇所は、北から盛岡、福島、高崎、大宮の4箇所です。まだJR東日本管内だけですが、やがて九州新幹線・長崎ルートができれば、JR九州内での分岐も誕生します。今回は、新幹線初の分岐である、大宮にスポットを当てます。

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上越新幹線の上り線を行くE926形「East i」。後方に見える東北新幹線を跨いで大宮駅方向へ走る。線路のカントで車体が傾いているのが分かるだろうか?(2011年12月27日、吉永陽一撮影)。

 1982(昭和57)年に東北・上越新幹線が開業したとき、初めての分岐ができました。場所は埼玉県伊奈町丸山付近。大宮駅から北へ約8km北上したところです。

 周囲は田畑と雑木林、住宅地が点在するのどかな地域で、そこにコンクリートの高架橋がドンっとあります。高架橋は二層式で、城壁か要塞かと思うほど堅牢なコンクリート構造物が構えているのです。地上から仰ぎ見たら高速道路ジャンクションみたいですが、ちょっと雰囲気が違います。高速道路と違って、分岐のカーブがかなり緩やかなのです。

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東北新幹線と上越新幹線の分岐点を北側から捉える。左下に分かれるのが東北新幹線、右下に分かれるのが上越新幹線。大宮駅方向は写真上(2011年12月27日、吉永陽一撮影)。

 新幹線の分岐は、曲線は可能な限り緩く抑えられています。高速走行で分岐できるためです。なので、地上から見ると「直線なのかなぁ」と思えてしまうほど緩い弧を描いています。そして上空から眺めると、高架橋に少しカントが付いており、僅かながら新幹線車両が傾いているのがファインダー越しに見えます。実際に新幹線が傾いて疾走する姿は、まるでレーシングカーや飛行機がシュッと風を切り裂いて走る姿のように、カッコ良いです。

 さて、大宮の分岐箇所を撮影したのは2011(平成23)年12月。この連載でもたびたび登場する「空鉄本」制作のためでした。単に分岐を撮ってもつまらない。車両がいてこそ臨場感があるので、まず列車が来ない時に全景と分岐高架橋の構造物を観察しながら撮影し、何かがくるのを待ちます。

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Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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