「空中空母」搭載機なら脚などいらぬ! 割り切りすぎた戦闘機「ゴブリン」の挑戦
俗に「ロマン兵器」などと呼ばれる軍事兵器がありますが、「空中空母」もその類かもしれません。これを実現しようとしたアメリカ軍は、本当に「地に足のつかない」戦闘機を作ってしまいました。試作戦闘機「ゴブリン」の顛末を追います。
脚の無い戦闘機「パラサイトファイター」が生まれた理由
陸上機にせよ艦載機にせよ、はたまた水上機にせよ、固定翼機には脚やフロート(浮きいかだ)など、なんらかの離着陸あるいは離着水装置が設けられているものですが、しかし世の中には、脚なんぞいらん、あるだけ邪魔とばかりに、それらを最初から装備しなかった飛行機もありました。それは空中発進、空中収容を目的に作られたXF-85「ゴブリン」戦闘機です。
第2次世界大戦でB-17やB-29などの戦略爆撃機を多用したアメリカですが、長距離を飛行できるB-29爆撃機の開発を進めるなかで、爆撃機に随伴可能な護衛戦闘機がないことを危惧していました。
B-29は、開発に際してアメリカ陸軍が出した要求仕様が、爆弾900kg搭載で航続距離8500kmというものでした。ここまで長距離飛行が可能な戦闘機は当時アメリカにはなく、そのため1942(昭和17)年ごろから「パラサイトファイター(寄生戦闘機)」という構想がアメリカ陸軍内で検討されるようになります。
これは、戦闘機を戦略爆撃機に搭載して敵地上空まで飛行し、敵の戦闘機が出てきたら寄生戦闘機を爆撃機から発進させ、爆撃機の護衛に就かせます。そして任務が終了し敵地から離れたら、寄生戦闘機を爆撃機に収納し、帰投するというものでした。
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