【6月】夜行特急「ドリームにちりん」と小野田線本山支線
それは梅雨の夜でした。南宮崎駅から夜行特急「ドリームにちりん」に乗車したところ、延岡駅発車後に状況が変わります。小野田線本山支線のことは、途中で考えるのをやめました。次の発車は16時台です。
「6月の鉄道」というと…? 2007年のあの夜
アジサイの花言葉は「移り気」「浮気」「無常」だそうです(日比谷花壇ウェブサイトによる)。
花の色が時期で変わることが由来といいますが、アジサイの花言葉は色別でも存在するそうで、青の花は「辛抱強い愛情」、ピンクの花は「元気な女性」、白の花は「寛容」とのこと。ロマンチックになってきました。
「6月の鉄道」といえば、アジサイと見事にコラボする写真が思い浮かびます。梅雨で濡れた姿も絵になりますね。有名な箱根登山鉄道ではライトアップもされます。ロマンチックです(箱根登山鉄道は台風被災で運休中。2020年7月下旬に再開予定)。
ただ、私が忘れられない「6月の鉄道」といえば、2007(平成19)年です。やはり、ロマンチックではありましたが――。
南宮崎発23時43分 夜行特急「ドリームにちりん」博多行きの変
2007年6月19日(火)の23時30分すぎ、日本の鉄道を乗りつぶしていた私(恵 知仁:鉄道ライター)は、指宿枕崎線と鹿児島市電、宮崎空港線に完乗したのち、日豊本線の南宮崎駅にいました。博多行きの夜行特急「ドリームにちりん」へ乗車するためです。
定刻23時43分、783系電車による夜行特急「ドリームにちりん」は南宮崎駅を発車。そして、宮崎市内通勤組がきっとみな無事に下車したに違いない延岡駅を0時49分に発車してから、状況が変わります。
「大雨のため、速度を落として運転いたします」
生半可な目覚まし時計より強烈な車内放送でした。眠気が一気に覚めます。翌朝、ある“なかなかに特殊な路線”の乗りつぶしを考えていたからです。
※「ドリームにちりん」の時刻は、実際と若干のズレがある可能性があります(当時の時刻表が手元に無く……)。
朝の次は、夕方まで列車がない…
夜行特急「ドリームにちりん」を小倉で降りたのち、私は乗りつぶしを続ける予定だったのですが、その対象路線が、よりによって小野田線の本山支線だったのです。
この、山口県内を走る本山支線、「逃したら次に乗ればいいや」という路線ではありません。朝7時台に2往復走ったのち、次の列車は16時台までありません。
この朝の列車を、夜行特急「ドリームにちりん」から捕まえる乗り継ぎ計画をたてていたのですが、夜行特急は闇の中を徐行中。多少の遅れなら……場合によっては「新幹線ワープ」を使えば……と考えを巡らせますが、列車は歩みを止めてしまいました。
「倒木のため、北川~津久見間で停電が発生しております」
窓外に何も見えないような場所で、夜行特急「ドリームにちりん」は約2時間30分の停車。そして動き出したものの――。
「この列車は博多行きですが、大幅な遅れのため、本日は大分で運転を取りやめます。小倉、博多方面へは、大分始発の特急「ソニック」へお乗り換えください」
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Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)
鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。