長く規制か「一気に止める」か 阪神高速の心臓「環状線」10日通行止め大工事の意義〈PR〉

大阪の道路交通の心臓部といっても過言ではない阪神高速1号環状線を10日間、環状線と接続する12号守口線の一部区間はさらに7日間、終日通行止めにする約20年ぶりの大規模工事が行われます。車線規制でもなく終日通行止め――そのほうが交通への影響も少なくなるといいます。

半世紀を経た阪神高速の心臓部

 1964(昭和39)年から大阪を中心に、総延長250kmを超える道路ネットワークを形成してきた阪神高速道路。そのなかで最も古く、最も交通量が多いのが、大阪の中心部をひと回りする1号環状線です。

 片側通行(環状線は時計回り一方通行)で、その交通量は多い区間で1日約10万台にも達する日本でもトップクラスの重交通路線――この環状線を数日間、終日通行止めにしてのリニューアル工事が行われます。

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2002年に行われた環状線の通行止めをともなう大規模補修工事の様子(画像:阪神高速道路)。

 今回の工事は環状線全体を「南行き」「北行き」の2区間にわけ、2か年で実施するものです。まず初年度は、2020年11月10日(火)午前4時から20日(金)午前6時までの10日間、「南行き」として11号池田線上りの梅田入口から、環状線の夕陽丘までの区間と、環状線に接続する12号守口線の一部区間(南森町・扇町付近)が通行止めになります。なお、守口線の一部区間は、20日以降も引き続き27日(金)まで通行止めを実施します。

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STEP1の環状線通行止めは11月10日から10日間、STEP2は区間を縮小して、20日から7日間で行われる(画像:阪神高速道路)。

 阪神高速ではこれまでも、様々な路線で終日通行止めをともなう大規模な補修工事を行ってきましたが、とりわけ環状線でのそれは、大阪における道路交通の心臓部を止めるといっても過言ではありません。阪神高速のネットワークは環状線から各路線が放射状に延びていく構造であり、その根元を止めることになるからです。

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堂島川に沿う阪神高速道路を象徴する区間も通行止めになる(画像:阪神高速道路)。

「終日通行止め」で行う意義

 今回は、通常の補修工事ではまずできない、通行止め工事ならではの大規模な施工内容も含まれます。たとえば、舗装を剥がし、道路の床板にあたる床版をそっくり取り替える、といったものです。

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床版取り替えの様子(画像:阪神高速道路)。

 開通から50年以上を経た環状線は、構造物の高齢化により損傷も進展してきたため、一部床版の取り替えや、劣化の要因となる水の浸透を抑える床版の防水加工など、長寿命化を図る時期に来ているとのこと。これまで、環状線の通行止め工事は大きくわけて2回行われており、前回は2001(平成13)年からの2か年で実施されました。それから20年のあいだにも、舗装や橋のジョイントなどの損傷が進み、このままでは道路の陥没などといった大規模な損傷の発生も懸念されるといいます。

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舗装の下のコンクリート床版で陥没などが発生している(画像:阪神高速道路)。

 しかし、重交通路線を終日通行止めする影響は大きく、ほかの高速道路では夜間のみ通行止め、あるいは車線規制をしながらといった部分的な通行止めで、床版を取り替える工事も行われています。ちなみに、環状線と同じ1964(昭和39)年に開通した東海道新幹線でも、1970年代から80年代にかけ、午前の列車を運休させての「若返り工事」が数十回にわたり行われましたが、それ以後は大規模な列車運休をともなう工事は実施されていません。

 対して阪神高速は前出の通り、数日間の終日通行止めをともなう集中的な大規模工事を積み重ねてきました。というのも、ほかの高速道路などで採用している部分的な規制の手法は、阪神高速道路のような都市高速道路では課題が多すぎて現実的ではないとのこと。

 なぜなら、沿道には住宅やビルがびっしり立ち並んでおり、大きな音の出る作業は昼間にせざるを得ず、かといって昼間に車線規制工事を行えば、大渋滞が発生するわけです。

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1988年、最初の環状線通行止めを告知するポスター(画像:阪神高速道路)。

 もちろん効率面でも、終日通行止め工事のほうが大きく向上します。たとえば1988(昭和63)年に初めて実施された環状線の通行止めをともなう大規模工事は、南行き6日、北行き5日の計11日間で行われましたが、部分的な規制工事であれば、68日間を要すると試算されていました。その間、慢性的な渋滞はもちろん、工事車両の出入りや工事の騒音など、多方面に影響を及ぼすことになるのです。また、夜間のみの通行止め工事も、上述の通り都市内では不可能です。

 昼間に大渋滞をともなう規制工事を長々とするくらいなら、通行止め区間や渋滞区間の迂回を促すといった交通影響対策や、その広報活動をしっかりと行い、短期集中型の通行止め工事をしたほうが、社会的な影響を小さくできる――このような考えで、各路線で通行止め工事を積み重ねてきたといいます。

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今回の工事では舗装の全面的な打ち換えも行われる(画像:阪神高速道路)。

 今回の工事では、舗装の全面的な打ち換えや、反射性に優れた案内標識板への更新と内容の見直し、それに合わせた舗装のカラー化なども実施されます。これらは、通行止めして行うからこそ可能なものだそう。工事後の環状線は、文字通り「生まれ変わる」わけです。

「期間中のご迷惑」利用者を事前にサポート

 工事期間中は、クルマの量も減らさなければいけませんが、経済活動を止めるわけにはいきません――阪神高速道路はこのように話します。マイカー利用の自粛をお願いしつつ、迂回ルートを事前に検討できる手段も提供し、工事による渋滞の影響まで調べられるようにして、おもに定時性が求められる輸送業務等への影響を少なくすることができたらといいます。

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1988年、最初の環状線通行止め工事初日の御堂筋。マイカー利用の自粛への協力が得られ、大きな渋滞などは発生しなかった(画像:阪神高速道路)。

 そもそも20年前よりも道路ネットワークが進展し、ルートの選択肢は大幅に増えています。2020年3月には阪神高速でも、14号松原線と4号湾岸線を東西につなぐ6号大和川線が全線開通。たとえば奈良の西名阪道方面から阪神高速で神戸方面へ向かう場合、環状線を経由することなく、大和川線で大阪市の外縁部をなぞるように進むことも可能になりました。

 こうした広域な迂回ルートを選択する目安として、工事期間中は東大阪、三宝、海老江、三宅の各JCT 手前で、「大阪市内通過ルート」と「広域う回ルート」の所要時間を比較する簡易情報板を設置するといいます。

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大和川線は「大阪都市再生道路」の一部。近畿道や、建設中の淀川左岸線などとともに、大阪市街の外環状線を形成する。左下は簡易情報板のイメージ(阪神高速道路の画像を加工)。

 また、阪神高速を降りて一般道へ迂回し、また乗りなおしても同一利用と見なす「乗り継ぎ」も、今回は臨時に数十種類の組み合わせを設定しています。

 これには、通行止め区間の末端に近い出口、たとえば梅田(11号池田線)、南森町(12号守口線)、土佐堀(1号環状線)などで多くの車両が退出し、周辺の信号待ちなどで激しい渋滞が予測されることから、「渋滞に遭遇する前に降りていただける」狙いもあるとのこと。さらに、通行止め区間と並行する一般道、御堂筋や松屋町筋、谷町筋などで、迂回車両の増加による渋滞も予想されており、少しでも交通を分散させたいと考えているそうです。

 そこで、工事期間中の一般道も含む迂回ルートの検索だけでなく、渋滞影響の予測も考慮し、平常時との所要時間の比較もできる「う回ルート検索システム ~1号環状線リニューアル工事2020 南行対応~」が用意されています。

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「う回ルート検索システム ~1号環状線リニューアル工事2020 南行対応~」の画面イメージ(画像:阪神高速道路)。

 これは株式会社ナビタイムジャパンが運営するもので、PCとスマートフォン双方に対応。出発地と到着地、および出発・到着時刻を入力すると、期間中の渋滞影響の予測を踏まえたルートや所要時間が提示されます。また、前後の時間帯での移動や、電車利用の場合などとの所要時間比較も可能。「工事期間中、どれくらい多めに時間をとればよいか」「電車ならばどれくらいで行けるか」といったことを事前に検索できます。

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2021年度には「北行き」区間の通行止め工事も行われる(画像:阪神高速道路)。

 なお、2021年度には「北行き」として、湊町JCTから中之島JCTを経て、11号池田線下り 福島入口までの間を通行止めしての工事も行われます。

●さらに詳しい情報は、阪神高速HPへ
https://hanshin-exp.co.jp/renewal/loop-s2020/

【了】

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