大洗~苫小牧間のフェリー「さんふらわあ」を使った格安ツアーが登場。しかし背景には、北海道航路を運航するフェリー会社ならではの悩みがありました。「冬の北海道」、そんなに魅力がないのでしょうか。実際にフェリーで行ってみました。
北海道航路「さんふらわあ」担当者の決断
「首都圏~北海道間の往復が、1万4900円からホテル1泊朝食付き」という激安ツアー「マイデザイン北海道」が、期間限定で「さんふらわあトラベル」から発売されています。
大洗港(茨城県)~苫小牧港(北海道)間で運航されている商船三井フェリーの「さんふらわあ」。それを使うプランで、大洗出発フェリーでの往復と、札幌、旭川、苫小牧、函館のホテルいずれか1泊朝食付きがセットです(復路乗船日は7日まで延長可能)。
大洗~苫小牧航路は、通常の片道運賃が1万740円からなので、ずいぶん値下げされています。乗用車を載せて行く場合も、通常は往復で5万8800円からですが、このプランだとホテル1泊朝食付きで3万8900円から(車体長5m未満)。だいぶ敷居が下がっています。
「冬の北海道、お客様が少ないんです……。これならば、これならば来ていただけるのではと、かなり頑張りました……!」
商船三井フェリーの担当者は、力を込めて話します。冬の北海道は「寒い」「スタッドレスタイヤが必要」といった理由のせいか、どうしても客足が落ちるそうです。
確かにそれもそうだとは思いますが、私(恵 知仁:鉄道ライター)は「北海道の冬」自体が「旅の醍醐味(だいごみ)」だと、小学生のころから思っています。
私は「2月の北海道」を選んで「完乗」しました
小学生のころから愛読していた、『時刻表2万キロ』などで知られる紀行作家 故宮脇俊三さんの著作。そのなかで「異質なものに触れるのが『旅』ならば、『冬の北海道』はおすすめ」とされていたからです。もっとも小学生のころは、知識としてあっただけですけども。
大人になって「北海道の冬」を体験したとき、その知識は身をもって知った事実になりました。
テレビで天気予報を見れば、当たり前のように気温はすべてマイナス。風で浮き上がり流れていく、軽く乾いた雪。肌を刺す凍てつく空気と、その透明感、きらめくダイヤモンドダスト。でも屋内に入ると暖かく、ラーメンも鍋も、温かい食べ物が夏より美味しい――。
ちなみに私はJR全線の完乗を、最北端の駅「稚内」で達成したのですが、季節はもちろん、「旅」感が最も高まる真冬の2月を選択。旭川から乗ったキハ54形ディーゼルカーは雪を巻き上げながら走り続け、終着駅の稚内では、車体に付着した雪で別人のような顔になっていました。
「すいている」って良くない? 閑散期の北海道航路「さんふらわあ」
2019年12月、実際にこの商船三井フェリー「さんふらわあ」で冬の北海道へ行ってきたのですが、良かったですよ。身も蓋もないことを言ってしまえば、フェリーも北海道も、すいていて。
広く、パブリックスペースも多いフェリー船内で、この人口密度の低さ。大型フェリーでの船旅は「のんびりゆったり」が魅力のひとつですが、大海原を眺めながら入れる大浴場もレストランも人が少なかったです(もちろん、観光シーズンの夏は大人気だそうですが)。
「すいている」だけで旅はずいぶんぜいたくになりますし、何より楽ですよね……。
あと、船の現在地、自分の船内位置などにもよるのですが、大部分の区間で、陸地から携帯の電波が届いていました(ドコモを使用)。船内のイスがあるパブリックスペースにはコンセントも用意されており、スマホをいじりながらマッタリする人、携帯ゲーム機で遊ぶ人の姿も。
……私は仕事(取材)での乗船なのでパソコンを開いてましたが、「洋上の密室」、はかどりました
なお、この激安プラン「マイデザイン北海道」では、往路の乗船が大洗発1時45分の深夜便だと最短1泊3日、19時45分発の夕方便だと最短1泊4日ですが、夕方便で行き飛行機で帰る2泊3日プランもWillerから発売されています。「この値段で行けるんだったら、週末だけちょっと北海道で過ごそう」も可能です。
●「マイデザイン北海道」往復1泊朝食付き1万4900円から(さんふらわあトラベル)
●商船三井フェリーで北海道に旅行に行こう!(Willer)
フェリー「さんふらわあ」での北海道旅行 こんな感じです
で、「冬の北海道」楽しんできました
●「マイデザイン北海道」往復1泊朝食付き1万4900円から(さんふらわあトラベル)
●商船三井フェリーで北海道に旅行に行こう!(Willer)
【了】
鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。