「バック駐車ができません。前から入った方がラクですよね?」なのに“バック駐車オンリー”の駐車場が増えているワケ

「駐車は前進で入る方がラク」「バック駐車はどうにも苦手」――そんな意見とは裏腹に、バック駐車を前提とした駐車場が高速道路などで増えています。欧米では前進駐車の方が主流なのに、なぜ日本ではそうならないのでしょうか。

「前から入れてバックで出る方がいい」ではなかった…

 2025年7月、新東名高速の静岡SA下り線で駐車マスの増設工事が完了しました。これに伴い、駐車場の特徴的なレイアウトが改められました。

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西湘バイパスの西湘PA。小型車エリアは右奥の通路から一方通行で進み、左の通路へ抜けていく。前進駐車を想定したレイアウト(乗りものニュース編集部撮影)。

 このエリアの小型車用駐車場は、通路の進行方向に対して両サイドの「斜め前方」へ向かって駐車マスが配置されていましたが、これが「斜め後方」に引き直されました。つまり、「前進駐車・バック出庫」の方式が、「バック駐車・前進出庫」方式に改められたのです。新東名では同様の変更が4例目となりました。

 これは、出庫時に周囲のクルマの動きがルームミラーなどに映りにくく、事故が発生していたためです。もともと周回型の場内構造に合わせて「前から簡単に停められるレイアウト」が採用されていたものの、「バックで駐車し、前進で出庫する方が運転しやすい」との意見もありました。

 他方、「バック駐車はどうにも苦手」という人は少なくありません。前進駐車のレイアウトも、そこに配慮していた側面もあるでしょう。

 そもそも欧米の商業施設などでは、前進駐車が主流です。ある駐車場メーカー関係者は、通路も道路も広い国では「わざわざバックで入れる必要もないのでしょう」と話します。

 しかし、狭い駐車スペースが多い日本では、バック駐車の方がラクなことを経験的に知っている人が多いのではないかと、ある自動車教習所の指導員は話します。

 前進駐車では、入る際に内輪差が発生するうえ、バックで出るときには、周囲にぶつからないよう何度も切り返す羽目になることもあります。

 もちろん、道路も広く交通量が少ない場所ならば、真っすぐバックして一度切り返すだけで出庫できるほうがラクかもしれません。しかし、狭い駐車スペースにバックで入れる手間はあっても、そこから広い場所に出ようとするときの方が、面倒や危険が生じがちだというわけです。

限られたスペースを活用するための「バック駐車」

 さらに、前出の駐車場メーカー関係者によると、一般的に前進駐車を想定した駐車場レイアウトの方が広いスペースを必要とするといいます。

 高速道路のSA・PAでは近年、社会問題化している大型車の駐車マス不足を限られたスペースで解消する手法の一つとして、大型車もバック入庫が必須な「V字レイアウト」を導入する箇所も増えています。1台分の大型車マスを並列で並べる(前進入庫・前進出庫)のではなく、大型車がお尻とお尻を突き合わせてVの字を描くように駐車する方式です。

 これにより通路を減らし、より少ない面積で多くのマスを確保できるといいます。

 とはいえ、駐車マスの配置は現地の構造や交通条件にもよります。2023年にリニューアルオープンした西湘バイパスの西湘PA(神奈川県)では、前進入庫・バック出庫のみの小型車マスレイアウトが新設されています。

【え…!】これが大型トラックも「強制バック駐車」のSAです(写真)

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