【空から撮った鉄道】1枚で写しきれないほどの大規模なスイッチバックを撮る 「立野スイッチバック」
2016年4月に発生した熊本地震では豊肥本線も大きな被害が複数発生。長らく部分運休をしていましたが、2020年8月に全線復旧しました。その1ヶ所である「立野スイッチバック」を地震前の2014年4月に空撮。1枚では収まりきれないほどのスイッチバックでした。
この記事の目次
・「ななつ星in九州」撮影の前哨戦
・規模が大きいと高度を稼がねばならず
・限られた時間で撮影する列車を決める
・発車までお付き合いしたかったけれど
【画像枚数】全13枚
「ななつ星in九州」撮影の前哨戦
豊肥本線は熊本と大分を結び、九州を横断しています。その道は険しく、阿蘇山や外輪山を越えねばなりません。熊本平野は瀬田駅付近で終わり、行く手には阿蘇の外輪山の山々が立ちはだかります。
瀬田駅は標高170m、立野駅は標高277m、赤水駅は標高465m。この隣接する3駅の標高は、阿蘇山と外輪山の急峻な地形によって、一気に上がっています。この難所を越えるため、立野駅~赤水駅間には「逆Z字」形をした三段スイッチバックが設置されました。三段スイッチバックとしては日本最大級の規模を誇ります。
空撮は地震の2年前の2014(平成26)年4月6日です。熊本空港から飛び立ち、クルーズトレイン「ななつ星in九州」と熊本市内を空撮するプランでした。「ななつ星」の空撮エピソードは、2018年11月7日配信の「車体の「七変化」に悩まされたクルーズトレイン「ななつ星」」に掲載されています。もう2年も前の記事なのですね。合わせてご覧ください。
「ななつ星」の空撮は久大本線の由布院駅からで、その前には立野駅上空を通過します。そこで前哨戦として、「立野スイッチバック」を空撮することにしました。ただし、雲がポコポコと湧くブチ模様の晴れになってしまったため、空撮の絵的には厳しいです。「ついでだから…」と諦めながら撮ることにしました。
規模が大きいと高度を稼がねばならず
「立野スイッチバック」は地図で見ても分かるように、とにかく規模が大きいです。シンプルな逆Z形三段スイッチバック構造ですが、国土地理院地形図で実測してみると、引き上げ線と立野駅までの距離が、直線で約1.5kmもあります。これだけ規模が大きいと、写真一枚で捉えるためには、高度を稼いで狙わねばなりません。
しかし現地へ到達すると雲が多く、影と晴れ間がミックスされていて、絵的にキツイです。真上から狙うカットは諦めました。実際の高度はもう忘れてしまいましたが、だいたい地上から500mくらいの高さだったと思います。
限られた時間で撮影する列車を決める
「立野スイッチバック」は熊本空港の東側にあって、すぐ到着できるのが便利なのですが、空港に近いということは、離着陸機の影響も受けやすいということです。このときは着陸機がない時間帯を考慮しながら、「ななつ星」撮影へ間に合う時間内で、かつ、何か列車が走っている時間を狙いました。すると、14時前に上りの優等列車「九州横断特急」が走っています。その列車を狙うことにしました。
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Writer: 吉永陽一(写真作家)
1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。