海底から蘇った老艦「わかば」の離島救出大作戦 水不足のSOSに「樽」大量輸送
オールド艦「わかば」海上で170個の樽を手渡し
当時のニュース映像を見ると、内火艇(備え付けボート)の吊り下げ金具「ボートダビット」にロープで樽をくくりつけて海の上にせり出し、ハシケ上の住民に渡したようです。揺れる海上で重い樽を手作業で載せ替えるのは大変だったことでしょう。
ハシケから住民の手で陸に引き揚げられた樽は各家庭に1個ずつ配られ、残りは貯水槽に給水され、利島はようやく危機を脱しました。当時の新聞は、海岸で給水を受ける女性たちの写真を載せてホッとした島の様子を報じています。
利島ではその後、貯水池や海水淡水化装置が整備され、このような非常事態は起きなくなりました。しかし少雨や装置の故障で、その後も水不足になったことがあったようで、水の大切さは今でも変わっていないと筆者(リタイ屋の梅:メカミリイラストレーター)は考えます。
利島を救った警備艦「わかば」はその後、護衛艦に改称。新型レーダーや武器類の搭載試験に従事する一方、1962(昭和37)年の三宅島噴火時に島民避難に出動するなど奮闘し、1971(昭和46)年に波乱の生涯に幕を閉じました。
東日本大震災や平成30年豪雨災害などでも、海上自衛隊の水船(艦船に真水を補給する支援船)が被災地に対して給水支援を実施しています。自衛艦が離島住民のために水を運び喜ばれる。これこそ自衛隊らしいエピソードといえるのではないでしょうか。
【了】
Writer: リタイ屋の梅(メカミリイラストレーター)
1967年生まれ。「昭和30~40年代の自衛隊と日本の民間航空」を中心に、ミリタリーと乗りもののイラスト解説同人誌を描き続ける。戦後日本史も研究中。
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