客車はまさに「鳥かご」 中国の消えた炭砿鉄道「沫江煤電」

日本では石炭を輸送する列車が消滅しましたが、中華人民共和国(中国)でも石炭輸送列車は減少しています。かつて四川省にあった「沫江煤電」でも石炭輸送が行われていましたが、この鉄道ではちょっと変わった客車がありました。

この記事の目次

・中国でも石炭列車は減少
・客車は座席・窓ガラスなし
・きっぷの購入は「初見殺し」
・老砿線は、利用客は多かったが……

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中国でも石炭列車は減少

 かつて日本では北海道や九州などで石炭輸送を主力とする鉄道がありましたが、採炭量の減少や採炭終了などにより廃止。2019年6月いっぱいで太平洋石炭販売輸送の貨物線が廃止となったほか、2020年3月14日のダイヤ改正でJR唯一の石炭輸送列車が運転を終了したことは記憶に新しいところです。

 中国でも各地に石炭輸送を目的とした炭砿鉄道がありますが、日本と同様、いくつかの鉄道が廃線になっています。そのなかで四川省楽山市沙湾区にあった「沫江煤電」は独特なものでした。

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凸型電気機関車にけん引されて老砿線を走る沫江煤電の客車列車(2010年3月21日、伊藤真悟撮影)。

 沫江煤電は、「楽山沫江煤電有限責任公司」という会社が石炭輸送を目的に敷設した鉄道で、草バ(「バ」は土へんに具)駅と老砿駅を結ぶ約3kmの老砿線と、途中の隧道口駅から分岐して向陽駅とを結ぶ約9kmの向陽線からなる、線路幅762mmの全線が電化された路線です。同じ楽山市でも蒸気機関車が走ることで有名な芭石鉄路(嘉陽小火車)からは、ひと山もふた山も越えた場所にありました。

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沙湾の位置と沫江煤電の主な路線図(乗りものニュース編集部作成)。

 この沫江煤電では石炭輸送を主としながらも旅客輸送が行われ、小さな電気機関車が客車をけん引。電気機関車は凸型と箱型の車体の車両が配置されていましたが、主に使われていたのは凸型の電気機関車です。車体上部は緑と黄色の迷彩塗装で足回りは青色。前照灯は3つ搭載し前面にはルーバー(通風口)もあり、小さいながらも威容を誇っていました。

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凸型電気機関車のけん引で草バ駅に到着した旅客列車。列車は乗客を乗せたまま推進(機関車の後押し)で入換を行い、後方に見えるホームへと客車を据え付ける(2010年3月21日、伊藤真悟撮影)。
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機回しを行う凸型電気機関車。草バ駅構内は新設軌道(専用軌道)なのか併用軌道なのかがわかりにくくなってしまっている(2010年3月21日、伊藤真悟撮影)。

客車は座席・窓ガラスなし

 客車も車体が短く、国鉄のワム80000形貨車のように車輪は2軸となっています。車体の周囲には鉄柵が取り付けられ、冷房装置や暖房装置はおろか、窓ガラスや座席すらありません。この客車に乗客が乗っている様子は、まるで「鳥かご」のなかの鳥のようです。そのため日本の鉄道ファンからは「鳥かご列車」とも呼ばれました。

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1号客車。乗降口は後方(左側)の片側1箇所にある。鉄柵で覆われていて窓ガラスはない。車体には「飛び乗り飛び降り厳禁 違反者は50元の罰金」と記載されている(2010年3月21日、伊藤真悟撮影)。
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こちらは3号客車。隣の車両との行き来ができるように、渡り板と、転落防止用の鎖が取り付けられている(2010年3月21日、伊藤真悟撮影)。
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3号客車との行き来ができる4号客車。ただし乗降口がないので、3号客車から乗り降りすることになる(2010年3月21日、伊藤真悟撮影)。

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