「3Dプリンター製の飛行機」が飛ぶ日 航空産業の地図を塗り替える可能性【Merkmal】

ライバル国に伍すための3Dプリンター 恐ろしいのはハッキング?

 アメリカ空軍はデジタル設計技術と最新の製造技術を駆使して、その時点の最新技術を盛り込んだ新戦闘機をおおよそ8年ごとに就役させ、中国やロシアなどに常に優位を保ち続ける「デジタル・センチュリー・シリーズ」というコンセプトを発表しているが、同空軍は3Dプリンターをこのコンセプトを実現するための新技術のひとつと位置づけている。

 現在アメリカで戦闘機の開発と製造ができる企業はロッキード・マーティン、ボーイング、ノースロップ・グラマンの3社しか存在しない。しかし、デジタル・センチュリー・シリーズを主導していたアメリカ空軍のウィル・ローパー前次官補は、3Dプリンターを含む新技術の導入により、これまで戦闘機の開発・製造を行ってこなかった企業の新規参入も可能になるとの見解を示している。

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3Dプリンター製部品の使用により国産化率の引き上げを狙うKF-21「ポラメ」(画像:韓国国防事業庁)。

 一方で、普及には課題も少なくない。

 3Dプリンター製部品の航空機への使用が開始されて以降、一部の専門家からは、ハッカーが設計段階で意図的に欠陥を組み込み部品の強度を弱める危険性が指摘されている。2016年に大学の研究グループが行った実験で、3Dプリンターをハッキングしてプロペラの設計に欠陥を組み込んだ結果、そのプロペラを使用したドローンが墜落したとCNNが報じている。

 また、IT関連を中心とする調査会社IDCがフランス、ドイツ、イタリア、イギリス4か国の航空宇宙関連企業に対して行ったアンケート調査によれば、3Dプリンターの製造企業と材料を供給する企業には、業界固有の製造ニーズに関する知識と理解が不足していると感じているという。

 3Dプリンター製の部品は航空機の開発、製造、整備だけでなく、航空産業のあり方や枠組みをも変える可能性も秘めているものの、そのために解決すべき課題も山積している。

【了】

※誤字を修正しました(6月5日15時00分)。

提供:Merkmal
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Writer: 竹内 修(航空ジャーナリスト)

海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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