カーアクションで活躍「劇用車」最近見ないワケ コロナ禍でもビジネスは堅調、なぜ?
派手なカーアクションを支えていたのは地上波2時間ドラマ
前田さんは、カーアクションが以前から減った背景について、「地上波の2時間ドラマがなくなったのが大きいのでは」と話します。
80年代後半以降アクション刑事ドラマが減少し、トレンディドラマが主流となっていきましたが、その当時、カースタントの舞台となったのは、「2時間サスペンス」とも呼ばれた2時間ドラマでした。
しかし、「ごくせん」や「花より男子」が大ヒットした2005(平成17)年、日本テレビが火曜サスペンス劇場を打ち切ったのが契機となり、民放各局の2時間ドラマは段階的に減少していき、2019年にTBSが幕を引くと広くみられている地上波での2時間ドラマ・レギュラー枠が消滅しました。これがスタントカーにとって節目のひとつになったようです。
最近はコロナ禍によりドラマの撮影も困難になり、劇用車も今までにない感染対策が必要となりました。その影響があるかを聞いたところ、「2020年の4~5月頃をのぞけば、特段の影響は感じていない」とのこと。バラエティや情報番組のロケは行われ、車内で対人距離をとるために台数の発注が増えるケースもあり、ロケ専用バスの需要は堅調だったそうです。
そして維持コストを抑えるため、クラッシックカ―は「使わないときはナンバーを外して、使う時に整備して再登録する」といった工夫も功を奏しているようです。
日本の「カーアクション」今後はどうなる?
もうひとつ、かつての「西部警察」の派手な爆破クラッシュシーンが最近見られなかった背景として、法規制や人材難で状況が厳しくなったという声があります。このあたりは実際どうなのでしょうか。
「規制については、敷地内で撮影するなど、ルールの範囲内で行うことは十分に可能です。カーアクションの人手については、もともとは社内でスタントも引き受けていたのですが、それぞれが独立されていったあとは、必要なときにそちらへお願いしています。ただ、最近では皆さん、かなりのベテランになられています」
前田さんとお話をすると、以前のようにカースタントに憧れた若い人が次々に入ってくる状況ではないようです。CG/VFXの発達により、迫力あるアクションシーンもほとんどPC上で賄えるようになった今、カーアクションをめぐる状況はますます厳しくなっています。しかし希望もありただし配信動画サービス向けの作品制作は増加しており、若いカースタントマンが育つ新たな場となるかもしれません。
前田さんは「日本には年代物のクラッシックカ―を整備する人材と技術がまだ残っている」と言います。劇用車はひとつの華やかな時代を映し出すの「顔」として、整備士たちの手で後世まで受け継がれていくことになりそうです。
【了】
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