「ホームの駅そば店」の風情はリニア時代も変わらない? 品川駅「常盤軒」に聞く裏側
品川駅ホームで半世紀以上にわたり営業する駅そば店「常盤軒」は、いわゆる独立系の老舗。鉄道の変化を間近で見ながら、「ホームのそば店」として守り続けてきたこだわりを、“中の人”に聞きました。
小さな「ホームの駅そば店」その営業の裏側
※本記事は『旨い駅そば大百科』(「旅と鉄道」編集部編/旅鉄BOOKS)掲載の内容を再編集したものです。
ほんのり甘いだしの香りを漂わせ、独特の存在感を放つホーム上の駅そば店。かつては長時間停車する列車も多く、ホームの駅そばは鉄道旅の醍醐味でしたが、近年はその営業が全国的に激減しています。そのようななか、品川駅のホームで営業するそば店「常盤軒」は、大手資本によるチェーン展開が進むJR東日本の首都圏の駅そばにあって、“独立系”店舗としても異彩を放つ存在です。
常盤軒の創業者は、幕末に薩摩藩家老を務め、大河ドラマなどにも登場する小松帯刀の子孫で、1922(大正11)年に品川駅での営業認証を受け、翌年に駅弁などの販売も始めています。
「駅そばを始めたのは1964(昭和39)年なので、50年以上続けています。現在は、山手線と横須賀線の各ホームに計2店舗。1日あたりの来客数は、山手線の店舗だけでおよそ600人になります」
こう話すのは、常盤軒 営業1部 統括部長の小塚 浩さん。山手線ホームの店舗は、朝6時から深夜23時半まで、16時間半のロングラン営業です。
「店舗で働く従業員の勤務は1日2交代で、14、15時くらいで入れ替わります。従業員はベテランばかりで、みなさん長く働いてもらっています。9時から11時と、14時から16時にかけては、来客が少ない“アイドルタイム”なので、昼や夜のピークに向けての準備も並行して行います」(小塚さん)
駅そば店では、あらかじめ製麺所で茹であげられた茹で麺を使用しているのが一般的です。そばの注文が入れば、麺を湯通しし、つゆをかければ出来上がり。テキパキした作業により、常盤軒でも1分足らずで提供しています。
「店内での調理は、湯を沸かしてつゆを作る程度です。店が小さいため、数百食分の大量の麺となると店内に入りきらないので、日に2、3度は店まで配送しなくてはなりません。地下にある関係者専用の地下通路を行き来しているのですが、最後はホームに出て移動しなくてはならず、お客さまがいっぱいだと、台車で商品を運ぶのも大変ですね……」(小塚さん)
しかし常盤軒の店主は愛想がまったくない。「いらしゃい」も「ありがとう」の言葉もない。愛想がないと蕎麦も美味しくは感じない。
常盤軒といえば先代か先々代社長の小松士寿子氏が三島由紀夫の夫人の叔母という関係に当たるんですよね。ちなみに大関株式会社代表取締役社長の長部訓子氏の祖母の母は小松帯刀の孫に当たる方だったとか。
※ところでWikipediaの「常盤軒」の情報が古すぎて……(常盤軒の仕出し弁当部門を譲渡するで話が終わってるけど、その譲渡先の会社、今年7月で事業終了しとるぞ……)、