日本だと「あたご」「むらさめ」に匹敵か 軍艦に「バイエルン」の名が4度も使われたワケ
人名でないことで抜擢の3代目「バイエルン」
3代目は、第2次世界大戦敗戦後の旧西ドイツが初めて建造した駆逐艦であるハンブルク級の3番艦です。このクラスは同型艦として「バイエルン」を含め4隻あり、全長は133.7m、満載排水量4700トン、乗員約270名。最大速力は35ノットを発揮し、単装10cm砲3門のほか、連装40mm機関銃4基や艦対艦ミサイル「エグゾセ」の連装発射筒2基、375mm対潜ロケット砲2基、単装533mm魚雷発射管4基などを備えていました。
ハンブルク級駆逐艦は新生西ドイツ海軍で初となる国産駆逐艦でした。西ドイツ海軍にはその前に初の国産艦としてケルン級フリゲートがありましたが、同級6隻は、それぞれドイツの都市名(ケルン、エムデン、アウクスブルク、カールスルーエ、リューベック、ブラウンシュヴァイク)が用いられたことから、それよりも大きな駆逐艦にふさわしい艦名として州名が用いられたようです。こうしてハンブルク級駆逐艦の1艦として「バイエルン」の名は復活しました。
駆逐艦「バイエルン」は1965年7月4日に就役したのち、東西冷戦下、NATO(北大西洋条約機構)の合同海軍の一翼を担って活動しています。そして1993年12月7日に退役後、1995年にデンマークで解体されました。
そして4代目として建造されたのが、今回来日したフリゲート「バイエルン」です。
このように、バイエルンの名は約150年のドイツの歴史の中で、4回も軍艦に冠せられています。その理由は、やはり同地はドイツの文化や経済、そして伝統を象徴する地域だからなのだといえるのではないでしょうか。
ちなみに、日本では「あたご」「むらさめ」「ありあけ」「くろしお」「あさしお」などが、旧日本海軍と海上自衛隊合わせて2021年現在までに4度も艦名に使用されています。
【了】
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
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