「よーし戦闘機つくるぞー!」 ついにドイツもOKした「ユーロファイターのトルコ輸出」が、“日本にもイイ話”のワケ

トルコがイギリスとユーロファイター「タイフーン」戦闘機の導入に向けて暫定合意を結びました。両国の利益が一致した形となりますが、それぞれどのような事情を抱えているのでしょうか。

F-16の後継問題に解決の道筋が見えてきたトルコ空軍

 2025年7月23日、トルコとイギリスがユーロファイター「タイフーン」戦闘機の導入に暫定合意しました。イギリスで組み立てられた機体をトルコに輸出するものですが、それぞれどのような事情があったのでしょうか。

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イギリス空軍のユーロファイター「タイフーン」(画像:イギリス空軍)

 トルコ空軍は世界でも屈指の戦力を持つ空軍ですが、1980年代から2000年代にかけて導入したF-16戦闘機は270機から236機(2024年度版ミリタリーバランス調べ)にまで減少しています。さらに、1990年代に導入したブロック30仕様機は老朽化が進んでいることから、後継機の導入は急務となっていました。

 トルコは以前、アメリカからF-35A戦闘機を導入し、ブロック30仕様機を中心にF-16を置き換える計画を立てていました。しかし、アメリカはF-35を捕捉する能力を持つとも言われる防空システムS-400をトルコがロシアから導入したことに神経をとがらせ、トルコをF-35計画から排除。これによりF-35導入の道は閉ざされていました。

 その後、トルコは国産戦闘機「カーン」の開発を加速化させつつ、ユーロファイターの導入に向けて交渉を進めていました。さらに、F-16の最新仕様で、F-35に比べれば導入のハードルが低いF-16Vの導入についても、アメリカとの間で交渉していました。しかし、カーンの開発は新型コロナウイルスの世界的流行などにより遅れ気味であり、またF-16Vの導入交渉もそれほど進んでいませんでした。

 トルコは今回の暫定合意により、カーンの実用化まではユーロファイターを運用しつつ、老朽化したF-16を退役させていく目途を立てられた形です。

 これはトルコ空軍にとって吉報であるのは間違いないのですが、筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)はむしろ、暫定合意で喜んでいるのはイギリスの方ではないかとも考えます。

 なぜなら、トルコ向けの機体を製造することで、イギリス国内における戦闘機の生産基盤と、工場の雇用を維持することができるからです。その背景には、ユーロファイターのプロジェクトの成り立ちと、製造と輸出に関する取り決めが深く関わっています。

【こうやって作ってるのか!】これが「ユーロファイター」の製造工場です(写真で見る)

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