露が破壊「世界最大の飛行機」眠るウクライナ・ゴストメル飛行場の今 変わり果てたアントノフの拠点

重傷を負っているのは「ムリヤ」だけではなさそうです。

An-225以外のアントノフ製航空機も

 ロシアによる軍事侵攻により、2022年2月末から戦禍に巻き込まれたウクライナの首都・キーウ(キエフ)近郊の「ゴストメル(ホストメル・ホストメリとも)飛行場」。ここは、ウクライナのアントノフ社(製造時はソ連・アントノフ設計局)がかつて手掛けた「世界最大の飛行機」、An-225「ムリヤ」などの航空機たちがロシア軍により破壊された場所です。「ムリヤ」のその無残な姿は、ウクライナ当局のSNSを通じて世界中に発信されました。そして今回、同飛行場の2022年5月現在の惨状が明らかになっています。

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2022年5月はじめのゴストメル飛行場の様子(2022年5月、Equality Personal Union 加藤秀一氏撮影)。

 2022年5月、特別許可を経てゴストメル空港の現状を確認し、撮影した加藤秀一さんは、現状を次のように話します。

「いつか見てみてみたいと思っていた飛行機(An-225「ムリヤ」)をこのような形で見たのは非常に残念です。(An-225は)主翼より後方のダメージは無いので、修復可能であれば修理して再び飛行出来れば、ウクライナの方の“希望”に繋がるかと思います」――。なお、同型機の二つ名である「ムリヤ」は、ウクライナ語で「夢」「希望」の意味を持ちます。

 An-225は全長84m、全幅88.74mで、最大離陸重量は“世界最大”となる640t。また、片翼に3発ずつ計6発搭載したエンジン、32個の車輪をもつムカデのような脚など独特の形状を持ち、日本では“怪鳥”とも例えられました。同機は当初、ソ連版スペースシャトル「ブラン」を胴体の上に積んで空輸する目的で開発されたものの、紆余曲折を経て、破壊される直前までアントノフ航空で貨物機として運用され、その巨体が生かされてきました。

 今回の軍事侵攻によるゴストメル飛行場でのアントノフ機の被害は、An-225だけにとどまりません。

 アントノフ社の公式SNSアカウントによると、同飛行場ではAn-225のほか、管制塔や管理棟、An-26航空機、An-74航空機が破壊。An-12航空機やAn-22航空機、An-225のベースモデルとなったAn-124航空機なども損傷を被ったとのことです。

※取材協力:加藤秀一さん(ウクライナへの人道支援を主に実施する個人間国際連合「Equality Personal Union(Instagram:@equality_personal_union)」に所属)

【了】

【写真特集】「ムリヤ」だけではない… ゴストメル飛行場の「いま」(13枚)

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