どこまで盛るの? 海自新型艦艇「イージス・システム搭載艦」は想像以上に多機能化へ

ただでさえ人員不足なのに…多機能化は「本末転倒」か

 そして、最も重要なポイントは、こうしてイージス・システム搭載艦の機能を増やしていくと、結果的に海上自衛隊の負担が増えてしまうことにつながるということです。

 弾道ミサイル防衛に特化した艦艇であれば、そのための要員と艦の運用に必要な乗員だけで最低限の運用が可能でした。ところが、敵の艦艇や地上目標を攻撃するとなればそのための要員、対空戦闘をするとなればそのための要員と、機能が増えるごとにそれに必要な人の数も増えていきます。これに加えて自らを防護するための機能として、潜水艦への対処能力やさらなる対空戦闘能力を付与するとなればその傾向はさらに強まります。

 つまり、海上自衛隊の負担を軽減するための艦艇のはずが、その逆の存在になってしまう可能性が高まってしまうのです。

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イージス・システム搭載艦のベースになるという海自護衛艦「まや」(画像:海上自衛隊)。

 確かに、北朝鮮のみならず中国への対応も、いまや日本にとっては喫緊の課題ですし、そのために多機能化は必要な要素です。しかし、目の前の目的を達成するために「あれもこれも」と機能や任務を追加するのではなく、まずはしっかりと目標を定め、それを実現するための計画を立てて、それに基づいて必要な装備を整備することが必要だと筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は思います。

 イージス・システム搭載艦が当初の目的とは異なる方向に向かっているとなれば、まずは「イージス・アショアの代替案」という前提そのものを撤回して、新たな目標を立てるべきでしょう。

【了】

【画像】盛りすぎといえば…トップヘビーすぎて転覆した旧海軍水雷艇「友鶴」

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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コメント

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7件のコメント

  1. 元々地上イージスだって中SAM+警備中隊の24時間監視が必要なんだから大げさに騒ぐことも無い。開き直って思いっきり多機能化して海上の移動要塞化するべきだろう。これを鎮守府として各地方隊に配備してEEZ内を巡回させればそれなりに強力な防空能力が実現できる。そうすれば削減できる部隊が陸海空で発生するから人員の問題も解決できる。

  2. 単艦で自己防衛も含め全てを詰め込んだら、いずも型を越える排水量になりそう。
    ミサイル防衛と敵基地攻撃は、射点が違うのでは無いだろうか。

  3. 海上に置く以上は自己防衛以上の作戦能力が求められて当然だと思います。
    そうでなければSPY-7レーダーを守るだけで護衛艦2隻以上付けなければいけないと思います。

    もしくはメガフロートで要塞化して竹島あたりに置くのもいいかもしれません。

  4. 隊員の人員繰りがままならない現状を考えると、使い道があやふやな大型艦船を海自に配備する訳にはいかないでしょう。立地や迎撃ミサイルのブースター問題を改めて再定義して「陸上イージス」に戻すべきですね。

  5. 陸上に設置するメリットをわからずに、「ミサイルもりもりなんだから良いじゃん!」みたいな反応が多すぎて困る。
    例えば育児中のママが子供を保育園に預けながら陸上イージスの任務に携わる。身体を故障したり病気になったりした人でも携われる。多少歳をとった人でも任務にあたれる。
    「陸上に設置し、通勤を許す(=家に帰れる)」というのはそういうメリットがある。これは艦艇にはできないし、艦艇への適合性のある人材を艦艇へしっかり振り分けながら全体的に自衛隊の能力を強化することへも繋がる。
    そういうことなんですわ。

  6. 既製品を流用した大型艦……。なるほどイギリス最後の戦艦“ヴァンガード”みたいなことか。
    スペック面では優秀かつデカいから、メディア映えするし。防衛費2倍だからこんな滅裂なことにも使えるよ。

  7. 税金税金。
    ガソリン代や消費税やワケわからん税金イベントで取られた金を使って戦争ごっこかよ。
    戦争したいなら、勝手にやれ。
    お前らに米も何も与えてやらねーよ。
    戦争終わったらお前らが一人もいなくなっているのが、戦争終結だ。
    戦争をする意味だ。
    分かったら黙って居なくなれ。