問われるJアラートと民間防衛 WW2期ロンドン市民の「ブリッツスピリット」に学べ

「国民保護」に関する情報、活動は、国際的には「民間防衛」に相当するものです。WW2期も日本のみならず、たとえばロンドンにおいてのその様子に関する資料が多く残されています。そこには、現代日本が学ぶべき多くのものが見られます。

ロンドン市民の「ブリッツスピリット」と民間防衛

 この「ブリッツスピリット」を支えたひとつが、民間防衛の充実でした。

 軍に入隊を望まなかった、または入隊できなかった人がホームガード(郷土防衛隊)、空襲対処サービス(ARP)、消防補助員(AFS)などの組織に参加しました。イギリスの常勤消防士は、1938(昭和13)年には約6600人だったのですが、1939(昭和14)年にはAFSを含めて約13万8000人にまで急拡大しました。

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1940年の地下鉄オルドウィッチ駅の様子。爆弾の直撃に耐える強度は無かった(画像:Unknown authorUnknown author、Public domain、via Wikimedia Commons)。

 またシェルターも公共、民間で多く用意されました。地下鉄駅に避難するロンドン市民の写真が有名ですが、1939年までイギリス政府は、交通を阻害し、避難者が集まって厭戦反戦感情が高まることを恐れ、地下鉄駅を避難所にすることは許可していませんでした。しかしロンドン空襲が本格化すると、地下鉄駅を含む多くの公共、民間シェルターが用意されるようになります。

 ちなみにロンドン空襲が始まった1940(昭和15)年には、ロンドン市民の4%が地下鉄駅や大規模公共シェルター、9%が中規模公共シェルター、27%が民間シェルターに避難し、60%は自宅またはホームシェルターに居たことが分かっています。

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爆撃された自宅から花と時計を持ち出したという写真だが、プロパガンダと推察される(画像:Unknown authorUnknown author、Public domain、via Wikimedia Commons)。

 このようにジュリオ・ドゥーエの理論は外れ、イギリスの精神科医たちは民間人の適応性と機知を過小評価していたことが分かりました。戦後の研究で、民間防衛は国民に対し、何もしないで絶望するのではなく、自らも働いて反撃するという士気の維持を物心両面から補完していたともいわれ、実際に精神疾患者数は減少していました。単純比較はできませんが、日本のB-29空襲に対するバケツリレーの経験とはかなり印象が異なります。

 日本の民間防衛も全く無力だったわけではありません。1942(昭和17)年4月のドーリットル空襲では、バケツリレーも一定の効果を発揮しています。弾道ミサイルや極超音速滑空弾など北朝鮮のミサイル開発は進んでいるものの、今回のJアラートを受けてもどうしたらよいか分からなかったり、自分事とは捉えなかったりした方も多いのではないでしょうか。パニックと同時に無力感、思考停止を誘うのも「心理的兵器」です。日本も「ブリッツスピリット」に学ぶことはあると思います。

【了】

【画像】きっと1度は目を通したほうがよい国民保護ポータルサイト「弾道ミサイル落下時の行動」

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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