津波被害の救助の前に“毒ガス検知”ナゼ? 全国の消防が集結 過去最大の合同訓練超リアルだった!
あえて遠方部隊同士でチーム組ませる意義とは?
他方で、この津波被害への対応訓練を行っている会場の隣では、地震によって発生した大規模な火災への対応訓練も行われていました。想定上、次々と延焼する住宅火災。取り残された住民を助け出しますが、トリアージの結果、助けるのが難しいと判断されることも。それでも、住民基本台帳に基づいて残る全ての住民を探し出します。
時を同じくして、住宅の延焼火災とは異なる原因で、大規模な工場からも火が出ます。出火を確認した磐田市消防は、地上からの放水に加え、ヘリコプターからの空中消火を要請。静岡空港を仮の拠点としていた各地の防災・消防ヘリコプターが次々と燃え上がる工場へと放水し、大ごとになる前に鎮火させていました。
2日目となる13日は、静岡空港の西側にある県有地において、南海トラフ地震で発生した「多重衝突事故」「地下施設での火災」「列車の脱線事故」「土砂災害」など多くのシナリオが想定され、これらに対処するための救助活動が一斉に行われました。
全国から集結した緊急消防援助隊は、このように指定された現場での救助活動に従事したのですが、今回の訓練の肝ともいえる「連携」に関して興味深い調整がされていました。それが「遠方の救助隊同士でチームを組ませて救助に当たらせる」ということです。
たとえば、近隣の救助隊同士であれば、日頃の訓練でも連携しやすいため、大きな問題は発生しません。それに対して、たとえば北海道の部隊と九州の部隊は、普段接する機会がありません。そのため、今回の訓練では、あえて遠方の部隊をワンチームにすることで、お互いに連携方法を模索させていたのです。
ちなみに、これだけ大規模な訓練が行われるということから、静岡県に設置された訓練会場付近には多くの市民が集まっていました。なかには遠方から駆け付けたと思われるファンの姿も。なにせ、全国の緊急車両が一堂に会するため、これ以上の撮影機会はないでしょう。
また、将来の消防士になるかもしれないチビッ子たちも多く見に来ており、老若男女問わず普段はなかなか見ることができない消防士らの活動に目を輝かせていたのが、印象的でした。
【了】
Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)
2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。
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