武器は強風!「お化け扇風機」付き消防車なぜ必要? きっかけはJR福知山線脱線事故

全国には個性的な消防車が数多く存在します。なかには大規模な消防局にしか配備されていないものも。そのひとつが巨大な扇風機を持つ「ブロアー車」です。一見、放水などできそうにないこの車両、どういう経緯で導入されたのでしょうか。

東京ドームを膨らますことも可能な性能とは?

 こうしたJR福知山線脱線事故の教訓から、総務省消防庁によって東京および一部の政令指定都市の特別高度救助隊にまず「大型ブロアー車」が、その後ほかの政令指定都市などに「特別高度工作車(ブロアー車)」が配備されるようになりました。

 これらブロアー車ですが、一例によると最大送風能力は1時間あたり21万立方メートルもの送風量を持っているとか。これがどのくらいの性能かというと、ペチャンコに潰れた東京ドームを5時間で膨らませることができる規模だといわれています。

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名古屋市消防局に配備されている大型ブロアー車。送風機は高さや送風方向の調整が可能(武若雅哉撮影)。

 また、大型ブロアーが発生させる強力な送風力を活かして、閉鎖空間に向けて、外部から強制的に新鮮な空気を送り込むことが可能です。これにより、閉鎖空間の中に充満した煙や有毒ガス、蒸気、熱気などを排出・換気することができ、前出のJR福知山線脱線事故で起きたような可燃性ガスが充満した場所でも、迅速かつ安全に救助活動を実施できるようになりました。

 さらに、この大型ファンはホースを接続することで霧状の水を噴霧放水することもできるため、爆発的に延焼する「フラッシュオーバー」と呼ばれる火災現象を抑制することもできます。

 その一方で、長く伸びる地下街やトンネル、高層ビルなどでは、いくら巨大なファンだとしても遠くまで風を届けることは困難です。そこで、登場するのが車両中央に搭載している可搬式の小型ファンです。まず大型ファンで陽圧換気を行ったあとに、この小型ファンを奥へ設置することで、より広い面積の陽圧換気を行うことができるといいます。

「万が一の事故の際、困難な現場であっても可能な限り犠牲者を少なくする。一人でも多く助け出す」。こうした消防士たちの思いが形になったものの1つが、この大型ブロアー車ならびに特別高度工作車だといえるでしょう。

 ちなみに、2019年にはこれらブロアー車の進化系ともいえる、自走式大量噴霧放水大型ブロアー車、通称「ハイパーミストブロアー車」というのが沖縄県の那覇市消防局に配備されています。

【了】

※一部修正しました(11月20日14時20分)

【まるでリモコン戦車!】全国唯一、那覇市消防のみが保有する「ハイパーミストブロアー車」ほか

Writer:

2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。

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コメント

2件のコメント

  1.  「総務省消防庁によって東京および一部の政令指定都市の高度特別救助隊に「ブロアー車」が配備されるようになりました」とありますが、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡には大型ブロアー車が、それ以外の政令指定都市には特別高度工作車が配備されていますので、ブロアー車は全部の指定市に配備されています。

     また、「高度特別救助隊」ではなく、特別高度救助隊です(救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令4条ないし6条を参照)。

    • ご指摘ありがとうございます。記事を修正しました。

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