JR津軽線 廃止も視野か 赤字66線区の「交通再編」先陣に? “縦割り”で分断されるバス&鉄道

トンネルの開通とともに人口減少 地域はいま「新幹線通学」

 かつて津軽半島の陸地移動は、沿岸航路(青森港~三厩~小泊。青森商船が運航)が戦後しばらく重宝されるほど困難を極め、1958(昭和33)年の津軽線全通は熱烈に歓迎されたそうです。

 しかし現在では道路状況も大きく改善され、冬場でも除雪が行われる国道280号や県道を移動するクルマユーザーのために「奥津軽いまべつ駅」も80台以上の無料駐車場を備えています。

 また「青函トンネル」の工事拠点でもあった三厩・今別では、合わせて1.3万人以上はあった人口が現在では3分の1ほどとなり、2022年3月には地域で唯一の高校(青森北高校今別校舎)も閉校。今別町では新幹線(奥津軽いまべつ~新青森)の通学定期に半額の補助を出しており、(ただしバスの運転手さんによると「人数は両手で足りるくらい」とのこと)津軽線を使わず青森市内へ通学できているとのことです。

 青森県は、同様に8月の豪雨被害を受けたJR五能線や、県からの支援増が要望されている「むつ湾フェリー」、地域利用の大動脈でもある「青い森鉄道」など、支援が必要な交通機関も抱えており、もとより低迷していた津軽線ばかりに力を注げる状況でもありません。

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奥津軽いまべつ駅。道の駅が併設されている(宮武和多哉撮影)。

 利用実態に合わない鉄道のダイヤ・ルートを受け継ぎ、これまでに輪をかけて鉄道代替バスが使いづらくなる、というケースも全国で多い中、「廃止後をどうするのか」という鉄道存続にこだわらない問いかけは、前述の公表資料で名前が挙がった66線区を抱える地域への参考となりそうです。

【了】
※一部修正しました(1月22日20時02分)。

【むしろ便利?】津軽線の蟹田~三厩間と「わんタク」運行エリア(地図)

Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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