全米騒然の「中国スパイ気球」 実はWW2の日本が“先祖”? 仕組みソックリな「ふ号兵器」とは
実は結構すごかった? 米をビビらせた「ふ号兵器」の能力
「ふ号兵器」の仕組みはとてもシンプルに見えますが、当時としては先進的な科学技術を取り入れていると筆者は分析しています。
たとえば日本からアメリカ本土に向け高々度を定常的に流れている偏西風を利用していることももちろん、大気圧の変化を利用した風船の高度維持装置を搭載していました。風船の制作に学徒を動員し、他の兵器製造に支障がないようにしていたことなど、各所に工夫が凝らされていたのです。
「ふ号兵器」は戦中、約1万発が放球。アメリカの記録によると、そのうち約250発が本土まで到達したとされ、なかには西海岸の都市で爆発し、アメリカ国民に被害を及ぼしたとも記録されています。このほか、小さな山火事として報じられたものの、実際には「ふ号兵器」の爆弾が原因である可能性がある事象も発生しました。
また「ふ号兵器」は爆弾による基地攻撃だけでなく、アメリカ全土が目標で、この爆弾で森林火災などが発生することで、アメリカ国民に対し自らの生活が脅かされる心理的負担を与える効果を狙ったそうです。なお、爆弾の代わりに、軽量で効果が大きい細菌兵器を搭載することも検討されたものの、このアイデアは昭和天皇によって却下されたとも伝えられています。
ちなみに実のところ「ふ号兵器」表皮の材質は、和紙をベースにしていたそうです。これは当時の日本では、ゴムが軍事品として貴重品であったからかもしれません。ただ、和紙では中に詰めた水素が漏れてしまうため、和紙にコンニャクを塗り付けたものを表皮としています。当時の日本の状況と、開発の苦労がうかがえるエピソードのひとつといえるでしょう。
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