「電子車検証」読み取れない! 長引く不具合に業界困惑 制度開始から2か月 原因は“縦割り”?

国交省内で小競り合い? リリースされない更新プログラム

 しかし、ソフトウエアの不具合のために、パソコンをもう1台用意するというのは本末転倒。やむを得ず経理用の端末に電子車検証の読取りアプリを導入し、請求書などの管理を中断させて対応しているという事業者は「いつになったら、正常に使えるようになるのか」と、困惑しています。

 対応が進まない理由のひとつが、国土交通省の中でも自動車局とは別の道路局がETCセットアップアプリを担当していることです。

 不具合の原因として名指しされたETCのセットアップ用アプリは、車載器を購入した場合などに自動車ユーザーが高速道路料金を決済できるよう、取付店が車検証情報などを登録するために使います。同じ道路局で有料道路を担当する高速道路課は「必要な協力はする」が「同様な不具合は、他のドライバーでも起こりうること」として、実務を担当する財団法人は指摘を受ける今日まで、積極的に不具合情報を開示しませんでした。

 しかし、電子車検証制度もETC制度も、国土交通省が決めた制度です。

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国土交通省(中島みなみ撮影)。

 電子車検証は紙のアナログ車検証より記載内容が簡略化され、運輸支局などに出向かなくても手続きができることが特徴で、そのために自動車ユーザーが負担する交付手数料は約300円程度値上げされました。ETCに至っては高速道路料金でシステムを維持しているだけでなく、ETC車載器を別に購入して維持する制度です。

 車検証の電子化は、行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)を先取りする形で、トラブルが発覚する2日前の1月4日に始まったばかり。さらにETCは、DXが話題になる前から進められたデジタル行政の先駆的施策です。そんな中で起きた不具合。なぜ問題が発覚しても、同じ国土交通省で意思疎通を図って対応ができなかったのでしょうか。

【了】

「エラーが出てしまいます」→国交省HPの回答は(画像で見る)

Writer: 中島みなみ(記者)

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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