満鉄だけじゃない 中国の鉄道を走らせた日本の国策会社「華北交通」「華中鉄道」 夢みた大陸縦貫

軍事輸送で鉄道は明治時代から重視されていました。日中戦争期に中国大陸でこの役目を担ったのは、現在一般的にはあまりその名を知られていない「華北交通」と「華中鉄道」という二つの国策鉄道会社でした。

シンガポール行き直通列車の大構想

 日本政府は、1941(昭和16)年2月14日の閣議において、日本国内の鉄道、朝鮮鉄道・満鉄、そして華北交通と華中鉄道を一体的に運用しようと決定しました。この構想はさらに進み、1942(昭和17)年8月21日(つまり日本が太平洋戦争で破竹の進撃をしている時期)には大東亜建設会議審議会から、中国大陸を縦貫し、さらに日本占領下にあるフランス領インドシナ、同盟国のタイ、さらに占領下のマレー半島を縦断し、直通列車を走らせる構想にまで膨らみました。

 この実現のためには、中国での占領地を新たに広げ、さらに桂林からフランス領インドシナのランソンまで鉄道を敷設し(桂林~ランソン間は戦後の1955年に全通)、さらにフランス領インドシナとマレー半島の鉄道を国際標準軌に改軌する必要がありました(なお、当時の日本国内でも国際標準軌による弾丸列車計画の構想は進められており、これは戦後の新幹線につながります)。

 つまり、当時の日本にとってこれはとうてい無理な大計画だったといえるでしょう。ところが、この構想は再び軍によって甦るのです。

 1943(昭和18)年になると、不足し始めた船舶と増大する貨物に対応するため、陸路での貨物輸送に転換することが必要になってきます。

 このため、同年5月には関東軍・満鉄・朝鮮鉄道・華北交通・華中鉄道および関係する各機関で構成された「大陸鉄道輸送協議会」が発足し、華北の塩・綿花・石炭・礬土頁岩(ばんどけつがん)、満洲の穀類・石炭・鉄および朝鮮の米と黒鉛を、年合計600万~700万トン、朝鮮経由で日本に送る計画が生まれました。

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大同炭田での石炭積み込み(画像:華北交通アーカイブス)。

 同年の9月以降には、在中国の米軍機が中国沿岸航路を航行する船を攻撃するようになっていました。その喪失総トン数は18年10月から19年3月までの間に19万9315総トン、隻数にして73隻に上ります。

 この貨物の陸上輸送への転換と沿岸部の航空機被害、さらには将来予想されるさらなる船舶不足――これらの要因により日本陸軍は、中国大陸を縦断する「大陸打通」作戦の実行を決断します。

【壮大!】中国大陸の日本の鉄道「華北交通」「華中鉄道」路線図

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