日本一周クルーズ船が「なぜか韓国に寄る」理由 寄らなきゃ違法!? 背景に"日本の海運を守る"制度
「いざという時は大丈夫だろ」甘い考えを打ち砕いた「3.11」
それでも産業界の一部には「市場開放して運賃の高止まりを是正すべき。船腹(貨物船が荷物を運べる量)はいわば"国際商品"なので、何かあっても好きなだけ、自由に国際市場から調達できる」と楽観視する声もありました。
しかし2011年の東日本大震災の時は、こうした考えがいかに甘いかを証明する結果となりました。福島原発が被災し放射能漏れの報が一斉に全世界に流れると、東京、横浜など東京湾の各湾に寄港予定だった外国の貨物船は、放射能の被曝を恐れて一斉に浦賀水道を通ることを拒否。何十隻もが神戸など西日本の港に針路を変えてしまったのです。
当時の状況を考えれば仕方ないことですが、緊急事態に素早く対応したのが内航海運を中心とした"日の丸商船隊"で、神戸に下ろされたコンテナを「助け舟」よろしく、外国船に代わって東京湾の各港までピストン輸送し、「あわや東日本全部がモノ不足」という危機を何とかギリギリのところで乗り切ったのです。
100年前の明治年間に定めた「いぶし銀の法律」が、いまだに日本の根幹を支えていると言えるでしょう。
【了】
Writer: 深川孝行
1962年、東京生まれ。法政大学文学部地理学科卒業後、ビジネス雑誌などの各編集長を経てフリージャーナリストに。物流、電機・通信、防衛、旅行、ホテル、テーマパーク業界を得意とする。著書(共著含む)多数。日本大学で非常勤講師(国際法)の経験もある。
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