独の政府専用機「怒りの即刻クビ事件」なぜ起きた? 軍のメンツをつぶしたA340 「中古機だから」とも言えず
「古いから壊れやすかった」とも言い切れず
今回のエアバスA340ベースの政府専用機は、中古機かつ決して新しいとはいえないものの、旅客機や貨物機では機齢が30年を超えることもあり、この政府専用機が著しく古いとは言えません。
また、ドイツ自体がA340型をメーカーであるエアバス社の製造国のひとつです。そうしたことから、補修用の部品が枯渇するとも思えません。そのため、頻発したトラブルの原因は「中古機を使っていたから」ではなく、そもそも“素性”の悪い機体だったとも考えられます。
大量生産する機械は、どうしても故障しやすい、いわゆる“ハズレ個体”が出てしまうのは仕方ないことです。航空機もそのひとつで、数えきれないほど多くの緻密なパーツから構成された巨大な精密機械と考えれば、なおのことでしょう。
また、ドイツの国防費の推移も背景のひとつとして考えられるでしょう。2023年6月に閣議で決まった2024年の国防予算は17億ユーロ増額の総額518億ユーロ(約8兆1070億円)でしたが、それ以前はドイツでは軍事力の削減が続いていたということです。緊縮予算の中、政府専用機とはいえ第一線の戦闘用でないため、整備の優先順位は高くなかった可能性もあります。
なお、ドイツではエアバスの最新鋭機「A350」をベースとする新型の政府専用機を導入済みで、これまでA340が担当していた要人輸送任務は、この後継機であるA350政府専用機が担当する予定です。
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Writer: 清水次郎(航空ライター)
飛行機好きが高じて、旅客機・自衛隊機の別を問わず寄稿を続ける。
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