台湾海峡「通るだけですよ」カナダ海軍艦の意図 アメリカと異なる姿勢は日本に似てる?

アメリカとは違うカナダの活動

 さらに、前述した在日カナダ大使館の駐在武官であるワット海軍大佐は、カナダ海軍の活動は「航行の自由を行使するものであるが、『航行の自由作戦』ではない」と明言しています。

 航行の自由作戦とは、領海や排他的経済水域(EEZ)などにおいて、国際法上認められないような過度な主張を行う国に対して、それを認めないという意思を示すために軍艦などを航行させるというもの。アメリカ軍の作戦行動の一種でもあります。

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海上自衛隊横須賀基地に入港するハリファックス級フリゲートの「オタワ」(2023年8月28日、稲葉義泰撮影)。

 それを踏まえて考えると、カナダ海軍の艦艇はたしかに航行の自由作戦に基づきアメリカ海軍の艦艇が活動する海域と同じ場所を航行するとしても、それはあくまで国際法における航行の自由が認められている海域を粛々と航行しているだけ、ということになります。つまり、特定の国の主張に真っ向から対抗するのではなく、間接的にそうした主張を認めていないことを示すことを狙っていると考えられます。

 こうした「やんわり」とした活動は、日本とも相通じるものがあると筆者は考えます。たとえば海上自衛隊は近年、南シナ海での活動を強化していますが、アメリカが主導する航行の自由作戦には一度も参加したことがなく、また日本政府の立場では、現在のところ参加する予定もないといいます。しかし、他方で南シナ海における中国の主張を認めているわけでもありません。今後、こうした柔軟な姿勢を共有する日本とカナダは、安全保障面でより一層協力関係を構築していくことが見込まれます。

【了】

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Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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